365日 (ページ14)

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desire to monopolize① ページ14

時計の針が頂点を通り過ぎてから、数時間が経った深夜
今日は、お店を閉めてから
系さんと一緒にUDIに戻ってきていた。

系さんから借りたTシャツを着て、シャワー室から出る。
当然だがもう誰も残っておらず、しんと静まり返った廊下に
スリッパの、ペタンペタンという足音が響き渡った。

エレベーターに乗り込み、大きく息を吐くと
はからずも速度を緩め、1階で停止した。

ドアが開くと、久部さんが下を向きスマートフォンを操作しており
乗り込もうとした所でようやく、人が居ることに気が付いたのか
ビクッと身体を仰け反らせる。

「びっ…くりした…。

あれ…？Aさん？」

久部さんは、中指で眼鏡を直しながら
存在を確認をするように、私を上から下まで見る。

『久部さん。驚かせてしまってすみません…。

それにしてもどうしたのですか？こんな夜中に。』

「いや…家の鍵がない事に気が付いて…。

それよりもAさん、その服…。」

Tシャツ1枚だけという格好に驚いたのか
久部さんは、手の甲で口元を覆った。
顔が真っ赤になっている。

『す、すみません、こんな格好で…。
もう他に誰もいらっしゃらないと思ったので…。』

恥ずかしくなり、顔が熱くなるのを感じる。
両手で抱きしめていたタオルを、低い位置に持ち直し
身体を小さくした。

いつの間にか再び上昇を始めたエレベーターの中で
こちらをじっと見たままの久部さんが、喉を鳴らす。

『あるといいですね、鍵。
家の前で気付いたのですか？』

いつも通りに話しかけると、久部さんははっとし
慌ててドアの方へ向き直ると、頭を掻きながら答えた。

「そうなんです。友達と飲んでて。
玄関先で鍵を探したらなくて…。」

『それは大変ですね…。』

ようやくエレベータがオフィスの階につき
ドアが開いた。

開くボタンを押すと、久部さんは会釈をしながら降りていき
続いて降りると、少し後ろを歩き、オフィスへと向かう。