365日 (ページ8)

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呼吸③ ページ8

気がつくと、所長室のソファに寝ていた。
上には大きなパーカーがかけてあり
中堂さんのにおいがして、思わずぎゅっと抱きしめる。

すると、ガラッとドアが開き
慌てて首元までパーカーを下ろした。

「目、覚めたか。」

『中堂さん…すみません、ご迷惑をおかけしてしまいました…』

「身体は大丈夫か？」

そう言いながら、ソファの肘掛け部分に座り
撫でるように、私の前髪をそっとあげた。

『はい。中堂さんのおかげで…』

中堂さんの手が気持ちよくて、思わず目を閉じる。

「無理するな。」

『ありがとうございます…』

コンコンと控えめなノックが聞こえる。

ドアの方を見ると、三澄さんと東海林さんが細く開けたドアから
申し訳なさそうな顔を覗かせていた。

あっ！と思い起き上がろうとすると
中堂さんに身体を押し戻される。

「まだ横になっとけ。」

「A、そのままでいいよ！」

「良い雰囲気のところ申し訳ないけど、失礼します！」

ふたりはソファの近くまで来てくれた。
見ると、久部さんと所長までも
ドアの外からこちらを心配そうに見ている。

『みなさん、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ないです…
お仕事にならないどころか、みなさんのお仕事も止めてしまって…』

「そんな！ふざけた私たちが悪いの。」

「そうよ。Aがこんなに狭いところがダメなんて知らなくて。」

『いえいえ。言ってなかった私が悪いんです。
三澄さんも東海林さんも全然悪くないので
気にしないでください。』

今度はちゃんと笑えていたはずだ。

「ありがとう～なんて良い子！」

東海林さんが頬をすりすりしてきてくれた。
なんて可愛らしい人なのだろう。

「でも、過呼吸になるほどなんて、何かあったの？」

三澄さんらしい。
私は出来るだけいつも通り、何もないと言うように笑顔で答える。

『いえ、そんな大した理由なんてないですよ。
ちょっとした幼い頃のトラウマ程度です。』

「でも…」

「そろそろいいだろ。」