365日 (ページ6)

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呼吸① ページ6

家でまとめた資料を、カバンに入れっぱなしにしてしまっていた事を思い出し
女子更衣室に向かっていた。

ドアの前まで来て、ノックしようと手を出すと
中で三澄さんと東海林さんの声が聞こえた。

「どうぞ～」

『おはようございます。どうかされたのですか？』

三澄さんと東海林さんが、ひとつのロッカーの開いた扉を動かしながら
少し眉間にしわを寄せている。

「A、おはよう。
いや、大したことじゃないんだけど…」

ピリリリリ

ミコトさんの携帯の着信音が鳴った。

「はい。…わかりました、すぐ行きます。」

「呼び出し？」

「うん。空、ごめんね、後でね。」

『いえいえ。いってらっしゃい。』

三澄さんが、コツコツと靴音を立てて更衣室を出て行き
東海林さんとふたりきりになった。

『そうだ、この間は大変そうでしたね。』

カバンから資料を出しながら、東海林さんへ声をかける。

「ああ、あれ？ほんと大変だったよ～！
お陰で異性間交流会に行き損ねたし！」

『異性…？』

「そうだ！今度もAも行こうよ！」

東海林さんが目をキラキラさせて迫ってくる。
どうしようと思っていると
廊下からカツカツと靴音が近づいてきた。

「夕子、大変！」

更衣室のドアが勢いよく開けられる。

「あらミコト、呼び出しは？」

驚く私をよそに、東海林さんは飄々と話しかける。

「それが、この間の始末書をかかされそうで…」

「えっ！？」

「三澄く～ん」

遠くから、所長の声が聞こえてきた。

「まずい！隠れないと！」

「Aに押し付けるかもしれない！
A！ここに隠れて！」

抵抗する間も無く、ロッカーに押し込められる。
ふたりもどこか死角に隠れたのだろうか
バタバタっと聞えた後、静かになった。

真っ暗で身動きの取れないロッカーの中。
私は、ダメだと思い、すぐ出ようと扉を力一杯押す。

しかし、鍵などかかっていないはずのロッカーが
ビクともせず、焦りが強くなる。

『み、三澄さん、東海林さん…開けてください…！』

ガタガタと揺らすが一向に開く気配がなく
次第に呼吸が浅くなってきた。

目を開けているのに何も見えない。
身動きが取れない。

ふと、幼い頃の記憶が蘇る。