365日 (ページ38)

今日:7 hit、昨日:55 hit、合計:249,082 hit

未来のために② ページ38

『いつも、お店の後にお家やUDIに行く時
こうして寄ってくれますが、大変ではないですか？
私はひとりでも大丈夫ですよ？』

「いや。どうせ帰り道や散歩のついでだ。
気にするな。」

『でも、ただでさえお疲れなのに…』

さあっと風が通り過ぎる。
系さんは歩みを止め、遠くを見るように目を細めた。

「いつも…

人気のない夜道を歩いていた有希子が
背後から急に襲われる。
そんな風にいつも想像をする。

犯人の顔だけが見えないがな…。」

こぶしを眉間に当て、自嘲気味に笑う系さんを
見ていられなくて
気持ちを考えると苦しくて
思わず、腕に抱きついた。

系さんは、少し驚いた顔でこちらを見る。

『もう一度、系さんがまとめた資料を見せてください。
何度もされていると思いますが
また一から、あらゆる可能性を洗い出してみます。』

導くように目線を移し、夜の闇で先の見えない道を
まっすぐと見据え、言うと
系さんも同じ方向を見て、力強く、でも優しく言った。

「ああ。頼む。
永遠に答えの出ない問いを
いつまでも続けている訳にはいかないものな。」

ポケットに入れていた手を出し
抱きついている私の手を取った。

滑るように指を絡め、しっかりと繋いでくれる。

見上げると、系さんは口の端を上げ
目を合わせたまま、繋いだ私の手にキスをする。

ふいに、花びらが私たちの間をすり抜けて行き
目で追うと、先に桜並木がある事に気付いた。

『わ。桜、満開ですね。』

きれいと呟くと、繋いでいた手が引かれ
その桜並木の方へと歩みを進める。

『系さん、良いのですか？
遠回りになります。』

「そんなに変わらない。
たまには散歩して帰るぞ。」

『ありがとうございます…。』

嬉しくて、重なる腕にそっと頭を寄せた。