365日 (ページ36)

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つよがり④ ページ36

「Aさん！大丈夫ですか！？」

警備員さんに軽く経緯を話した後
久部さんも駆け寄ってきてくれる。

『私は大丈夫です。それより久部さんは？
お怪我ないですか？』

「大丈夫です。
あまり役に立ちませんでした。」

『そんなことないです。
助けてくださって、ありがとうございます。』

久部さんは照れくさそうに笑った後
連れていかれる増田さんをちらっと見ると
「鑑定結果が気に入らなくて逆恨み
ってやつですよね…」
つぶやき、三澄さんを見る。

三澄さんは眉を下げて肩をすくめる。
久部さんが差し伸べた手を取り、立ち上がった。

久部さんは、こちらにも来て
手を差し伸べてくれる。

『あ、私は…』

自分で立ち上がろうとした瞬間
中堂さんに横抱きで抱き上げられる。

久部さんは、差し出した手の行き場をなくしてしまった。

『な、中堂さん…。
自分で歩けます。』

「怪我人は黙ってろ。

病院に連れて行く。あとは任せた。」

私の抵抗もむなしく、三澄さんと久部さんにそう告げると
中堂さんはそのまま歩き出した。

『あの…中堂さん、重くないですか…？』

「軽すぎる。
お前、ちゃんと食ってるのか？」

『食べてますよ。
中堂さん、力持ちですね。』

「お前がどんなに重くても、持ち上げてやるから安心しろ。」

ふふっと笑って彼の胸に頭をつける。
見上げると、青空を背景に優しい視線が下りてくる。
まぶしくて目を細めた。

治療が終わり、車へ戻ると
中堂さんは、助手席のドアを開けてくれる。

『中堂さん…ごめんなさい…。』

助手席のドアを開けたまま立つ中堂さんの目を見て、改めて言うと
中堂さんはかすかに微笑み、私の頬に優しく触れる。

「名前…」

『えっ？』

「さっきは呼べただろ。」

『あ、あの時は…必死だったので…』

「今夜は、言えるまで逃がさないからな。」

囁くように言うと、そのまま後頭部に手を添え
ゆっくりと顔が近づく。

確かめるように、心を交わすように、何度も口づけた。

痛みなんて忘れるくらいに。