365日 (ページ33)

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つよがり① ページ33

絵にかいたような晴天だった。
風も柔らかく、思わず大きく息を吸い込む。

西武蔵野研究センターの門をくぐると
先を歩く三澄さんの姿が見えた。

『三澄さん、おはようございます。』

「A、おはよー。」

並んで歩いていると、急に後ろから肩を組まれた。

「ミコト、A、おはよ～。」

「夕子！びっくりした。」

『東海林さん、おはようございます。』

おふたりが並んで歩き始めたので
私は一歩下がり、後ろを歩くようにする。

「そういえば、昨日の依頼者、大丈夫かな？」

「ああ、増田さん？奥さんの解剖依頼だった。」

『昨日三澄さんが執刀された方ですよね。
確か、自分で命を絶つ訳がない、と
解剖依頼をされた…。』

三澄さんも東海林さんも
わざわざ振り返りながら話をしてくれる。

「そうそう、結局不審点はなくて
自分で命を絶った事に間違いなかったんだけど
ちょっと様子おかしかったよね。」

「大事な人を亡くして、参っちゃったのかな。」

大事な人を亡くしたらと考えるとやりきれない気持ちだ。
しかも、自ら命を絶ったとなると余計に。
認めたくない気持ちも分かる気がする。
でも昨日の方は、少しそれとは違うようにも感じた。

おふたりはもう、話題を変えてじゃれあっている。
更衣室までついたので、気持ちを切り替え
着替えようとロッカーを開けた。

午後になり、2件目の解剖を終えた頃、内線が鳴った。

『お疲れさまです、Aです。』

それは三澄さん宛の内線だった。
どうやらお客様らしい。

オフィスを見渡すと
ソファに座っている中堂さんと目が合う。

『増田様…ですか。
はい、承知いたしました。
三澄さん探して来ます。』

電話を切ると、聞いていたのか東海林さんが
「ミコトは六郎と売店に言ったよ。」
と教えてくださった。

『ありがとうございます。』

行ってきます、とオフィスを駆け出した。