365日 (ページ31)

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dedicate to you③ ページ31

夕方になり、作業もひと段落したところで
手元にある資料を戻しに行こうと、デスクを立つ。

『下に行ってきます。
他に戻すものはありませんか？』

「あ、Aごめん、これもお願い。」

三澄さんが2冊の本を乗せてくれる。

『はーい。』

「Aさん、僕も手伝います。」

久部さんが立ち上がる。

『このくらい大丈夫ですよ。
ありがとうございます。』

古本屋でアルバイトをしていた事もあるんです
と両手で持っている本を少し高く上げると
ひとりで資料室へ向かった。

薄暗い資料室。
山積みの本を、もとあった場所に戻していく。

棚番を確認しながら順番に収めていると
扉の開く音の後に、聞きなれた足音が聞こえてきた。

『中堂さん。何かお探しですか？』

ポケットに手を入れたまま
ゆっくりとこちらに歩いてくる。

「いや…」

目の前まで来ると、少し目線を外し、片手を口元にやる。
珍しいなと思い、のぞき込むように中堂さんの顔を見る。

目線が合うと、意を決したように
ポケットに入れたままだった方の手を出し
こちらに差し出した。

その手には、彼が持つイメージがあまりない
四角い箱が握られていた。

『もしかして…私に…ですか？』

「ああ。」

少し恥ずかしそうに、また目線を外す。

そっと箱を受け取ると
かけられているリボンが少しくたびれて見えた。
もしかして、ずっとポケットの中で握っていたのだろうか。
そんな中堂さんの様子を想像して、胸が熱くなる。

『開けてもいいですか？』

「当たり前だ。」

丁寧にリボンをほどくと、箱の中身は
シンプルなロザリオペンダントだった。

『わ、すてき…。
すごく嬉しいです。ありがとうございます。』

どうしよう。嬉しい。
中堂さんは、どんな顔をして選んでくれたのだろう。
悩んだり、その間は
私のことを考える事もあったのだろうか。