365日 (ページ25)

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曝け出す① ページ25

いつも通りの光景だった。

解剖が終わり、定時までもうすぐという時間帯
4人がデスクで雑談をしている。

「今日も疲れたね～。」

東海林は、大きく伸びをする。

『よろしければ、コーヒーか紅茶淹れましょうか？』

「ありがとー助かるよ。私コーヒー！」

「僕も手伝います。」

「私は紅茶！ほんとAは天使だ～！」

東海林がAの頭をぐりぐりする。

じゃれているなと思ったが
ぐしゃぐしゃになった髪の隙間から
ふと見えたAの雰囲気が、いつもと少しだけ違った。

『私は悪魔ですよ。』

目を伏せて、口の動きでそうつぶやいたように見えた。
ほんの一瞬だったため、他の3人は気付かなかった様子だ。

すぐにいつものAに戻ると
『淹れてきますね。』
と笑顔で給湯室へ行った。

次の日、朝から天気は良くなかった。
厚い雲がどんよりと空を覆っている。

「あれ？今日Aは？」

三澄が東海林に尋ねる。

「お休みかな？」

東海林も知らないようで、再度三澄へ尋ねる。

「良さそうなお店見つけたから
今日みんなでお昼に行こうと思ってたのに。」

「連絡してみる？」

東海林がスマートフォンを取り出したので
辞めるよう手で示す。

一瞬、不思議そうな顔をしたが
あまり気にしていない様子で
ちょうど神倉さんがやってきたので
同じ問いかけをしていた。

「Aさんは今日お休みです。」

「珍しい。
Aは大学のない休日は、絶対に入っていたのに。」

「そういえばそうね。風邪ですか？」

「いえいえ、違います。
ここに入るときに、この日だけは
なにがあっても休みにさせて欲しいと言われていたので。」

神倉さんからの言葉に、顔を見合わせるふたり。

「何かあるのかな？」

「記念日？」

「ライブ？」

「イベント？」

「はいはい、おしゃべりはそのくらいで。
今日はAさんがいないので
中堂さんは三澄班のフォローに入ってください。」

「はい。」

「中堂さんが素直に受け入れた…」

「今日雪でも降るのかな…」

聞こえているが聞こえないふりをして
神倉さんの所へ行く。

「神倉さん、すみませんが今日は午後休みを頂きたい。」

「あら、中堂さんも珍しい。
まぁ今日は解剖のご依頼が2件だけですので
大丈夫だと思いますよ。」

軽く頭を下げると、早く終わらせるべく解剖室へ向かう。