365日 (ページ17)

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sweet temptation③ ページ17

『ありがとうございます。』

笑顔で伝票を受け取る。

「ご馳走さま～。今日も美味しかったよ。」

最近よく来てくださるお客様だ。

『いつもありがとうございます。1923円です。』

「そうそう、この間はケーキなくて残念だったよ。」

『すみません…。
今夜はしっかり仕込んで行くので、よろしければ明日いらして下さい。』

「あ～明日は来れないんだよね。
次いついる？その時に俺も行こうかな。
ねぇ、シフト教えてよ。」

『ええと…シフトはまだ…』

「A」

話を遮るように名前を呼ばれる。
振り返ると、中堂さんがコップを持ってこちらを見ていた。

「悪い、水をくれないか。」

テーブルに肘を付き、空のコップを振って示している。

『はい！すみません、すぐに。
申し訳ございません、77円のお返しです。』

おつりを受け取りながら、中堂さんの方を見たお客様は
急に狼狽した様子で
「あ、じゃ、じゃあまたね」
と帰って行った。

『ありがとうございました。』

少し不思議に思いながらも、お辞儀をしてお見送りをし
ドアが閉まった音がすると、慌ててカウンターに戻った。

『中堂さんすみません。
お水、気づかずに。』

水差しを取って中堂さんの隣まで行き
空のコップに手を伸ばすと、その手を取られた。

『な、中堂さん…』

急なことに頭がついて行かず
ドギマギしていると、ぎゅっと手を握られる。

「お前、ちゃんと休んでいるか？」

いま心を休ませてくれない人から
思いがけない優しい言葉。
驚いたが、少しすると、じんわりと胸に広がる。

『はい。大丈夫です。ちゃんと休んでいます。』

手を握り返し、笑顔でこたえる。

『お店が終わると電車はないのですが
店長が始発が出るまでいさせてくださるので
デザートの仕込みが終わった後に、仮眠を取らせてもらってます。』

中堂さんは、手を握ったまま私をじっと見ると
一瞬複雑な表情をした後、さらっと言った。

「仮眠ならうちですれば良い。」

聞き間違いかと思い、少し考えるが
やはりそう聞こえた。

『うちって…中堂さんの家ですか…？』

「他にどこがある。
俺がいるときはUDIでもいいが。」

『で…でも…』