【名探偵コナン】やれる事はやるつもり (ページ39)

今日:18 hit、昨日:38 hit、合計:158,289 hit

三十八話「守りたいもの」ページ39

『あぁ、全部処分したよ。君が住んでた家の方も“組織”の人間として片付けといた。証拠は上がらない』
諸伏〈ありがとう、ｸﾞｽﾞｯ……ございばす……〉
『あぁあぁ、泣かないの』
景光〈びぇぇ……〉

電話越しで聴こえる泣き声に、全くこの子はとため息が出た。それをどう捉えたのかまた嗚咽混じりのガチ泣きに移行し、俺はそれを宥めるの繰り返し

車の中で手紙を書き始めてからずっとこうなんだから、困ったものだ

『じゃぁとりあえず切るよ。……数年経ったら、またこっちにおいで。変装でもしてさ』
景光〈あい……〉

元気の無い声に「数年なんてあっという間だよ」と笑いかけ、一言二言話したあと電話を切った

そして履歴からも、電話帳からも諸伏景光(・・・・)の名は消える

『……数年かぁ』

会わない方が良いのは当然だ。だけど彼の精神衛生上、カウンセリングを受けたとしても俺達の誰かに会いたがる気持ちは防ぎきれないだろう

変装と証人保護プログラムでついた名前をしっかり自分のものに出来れば、きっと今の不安は取り除かれる。つまりは彼の努力次第な訳だ

そう上手くいくものとは思っていないけど、彼なら意地でも頑張りそうだなと思いつつ携帯を閉じる。さて、今から今度は零君のカウンセリングだ

《帰宅後》

家に帰って、早速ソファの上で涙の跡をつけて寝ていた零君を発見。どうしたもんかと考えてた俺は、よっこいせと彼を抱き上げ自分の寝室へ運んだ

取り敢えず今日はこのまま休ませようと、布団を被せてキッチンに向かう。時間も中々遅くなってきたし、すぐ寝る可能性も考慮して軽いものにしようか

零君の好物がなんだったかを記憶の断片からかき集めつつ料理をしていると、不意に俺のからだに腕が回されホールドされる。それが何なのかを理解した俺はフライパンで炒めている食材を動かしつつ口を開いた

『よく眠れたかな？』
降谷「……少し、怖い夢を見ました」
『あらら』

だからこうしてるの？と抱きついている状態を問うと「駄目ですか」と言いつつ腕に力を込めてきた。ダメじゃないよと返答し、事前に用意していたお皿に出来た料理を盛り付ける

『さて、零君はピーマンの肉詰めは食べれるかな？』
降谷「子供扱いしないでください」
『はーいはい』

少しだけ何時もの調子が戻ってきた零君に、「大丈夫だよ」と口では言わず頬を擦り寄せる。彼はその意図に気付いたのか、少し涙を浮かべて擦り返してくるのであった