桜樹の守人 (ページ8)

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和平の後現れたのは、巨大なスーツの男であった。
｢おい、巨大なおっさん！学園の平和を乱す者は、何人たりとも許してはおけない！｣
と、ジンペイ君は指をさしながら言う。
見るからに英雄(ヒーロー)と言った感じで、とてもかっこいい。
｢いくぜ、バケーラ！変身だ！｣｢ダドー！｣
阿吽の呼吸でキメた、その時。
｢……あっ。｣
巨大なスーツの男は地面を抉りながら逃げ出したのだ。
メラ君もあっけに取られて
｢……逃げやがった…｣
なんて呟いている。
｢何度来ても、オレが相手になってやるぜ！｣
そう締めて、彼らは教室へ帰って行った。
｢……見たかったな、変身。｣
こんなことを思うのは少しワガママだろうか？

時間も場所も変わって、ここは妖怪・怨霊研究部の部室である。
あれから特に事件はなかったので、もうルーティンになっている妖気の練り上げの訓練をしながら、本を読んだりバケーラの毛繕いをする。
｢あれは、学園七不思議の1つ。巨大サラリーマン宮沢さんだね。｣
｢あれは間違いなく、YSPクラブが解明すべき案件だよ〜！｣
｢七不思議って言ったら、恋愛禁止の呪いに続いて2つ目だな。｣
部屋の中心ではそんな会話が繰り広げられているが、会話内容を聞けば分かる通り、彼らは我が部の部員ではない。
今年の入学式の少し前。新設予定クラブの数が教室の数に収まらず、うちの部室には｢特撮ヒーロー同好会｣と｢YSPクラブ｣が一緒に入ることになった。
大騒ぎするのは正直辞めて欲しいが、バケーラの毛並みを堪能できるので特別に良しとしよう。
｢何か、出現する法則性とかあるのかなぁ？｣
｢そうだねぇ……｣
サン太夫君がパソコンのキーを数度叩く。
｢これが学園SNS、Yチャンネルでの宮沢さんの出現情報を元に予測した回遊ルート！｣
｢なるほど、このどこかに巨大変態マン北澤さんが現れるわけだ。｣
｢巨大サラリーマン宮沢さん、ね。｣
｢とにかく、これよりYSPクラブは学園七不思議の1つ、巨大サラリーマン宮沢さんの謎解明を開始だ！｣
ジンペイ君の言い間違いボケを訂正しつつ、YSPクラブはこの案件に乗り気のようだ。さて、変身が見られるなら私もついて行こうかな。