二十五話 ページ27
『幸いチャットで場所も分かりますし、美智子さんが優しいハンターさんだったと教えに行きましょう』
行きましょう、とは言ったが二人共着いてくるかは分からない。
先に歩き始めれば後ろを歩いてくる音が聞こえ、来ていることを把握した。
振り返ることも無く歩いていれば、隣に並びながら美智子さんが尋ねてきた。
「Aはん、ちょっと聞いてもえぇ？」
『何でしょうか？』
「こことそこ、怪我でもしてはるの？」
そう言って自身の首と手首を指してきたため、視線を逸らし包帯に触れる。
このタイミングで聞かれるとは思っていなかったため、返答に戸惑った。
しかし直ぐにいい誤魔化しが思い付くはずもなく
そのままを答えることにした。
『えぇ、まぁ……治らない傷がありまして』
正直、昔の傷だし何とも思っていない…と言えば嘘になるが、そこまで話題として触れられることに対しては気にしていない。
しかしまあ、傷を見て同情という表面上だけの言葉をかけられるのは勘弁なのだが…。
「そうなん……女の子にそんな大層な傷を負わせるなんて、酷いわぁ」
先程よりも大きめの声で呟いている美智子さん。
少しばかり怒っているように感じるのだが、一体何に怒っているのだろうか。
自分の言動を見直してみたが、全く分からず首を傾げる羽目になる。
そんななか、後ろを着いてきていたイライさんから声がかかった。
「その荒々しい傷は、君の仕事で負ったものなのかい？」
『……え』
大層不思議そうな口振りで聞いてくるのに思わず返答しかけ、違和感に振り向く。
何故、彼は荒々しいと言ったのか。
「傷」と言わず、「荒々しい傷」と言った。
見えている？
いいや、そんなはずは無い。
しかし……まさか。
そこまで考え、ゾッとしたのと共に首を隠す。
見られたくない。
過去を思い出させないで。
感情が溢れてしまいそうで、何かが零れ落ちてしまいそうで、必死に抑えようとしていた時に思い出した声。
【自分の体を…大事にして下さい】
傷だらけな自分に、今更そんな……。
そう思っても、引っ掛かってしまうのは何故だろう。
いくら考えようとも、納得のいく理由などは見つからない。
だが、過去の自分がその言葉を聞いていたら、どうなっていただろうか…なんて、内心自嘲してしまう。
終わり
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夏目(プロフ) - 続きってないんですか？ (2019年7月18日 15時) (
レス) id: 6f15b8d456 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜漬け(プロフ) - りょうです。さん» ありがとうございます！そう思って下さっている方が居ると知れて嬉しいです^^* 励みになります！ (2019年2月28日 19時) (レス) id: 414c0d4d99 (このIDを非表示/違反報告)
りょうです。(プロフ) - 面白いです！更新頑張ってください！！待ってます！！ (2019年2月23日 23時) (レス) id: f9bb48da83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜂蜜漬け | 作成日時：2019年1月29日 5時
