27 戦闘訓練[10] ページ31
「っ!」
Aの予想は的中した。
足元を凍らされて身動きができない葉隠と同じだろうと思い込んでいた彼は突然の奇襲に反応が遅れ、尾白の一撃が轟を襲う。
しかしながら流石は推薦入学者、咄嗟に出した氷の壁で防ぎ、反撃の腕を伸ばすも、見逃さなかったAの鱗赫が轟の足を掬い上げて逆さまに吊るし上げる。
「尾白君、テープ!!!」
反撃の余地を与えない為に即座に尾白へ叫ぶ。
テープを握った尾白の手が、ぶら下がった轟の腕へと伸ばされる。
「チッ・・・」
「なっ?!」
勝った、と半ば確信を持って轟に腕を伸ばした。
なのに今は伸ばした腕がちっとも動かない。そして足もこれ以上先に進まない。
その疑問は振り返って確かめるまでもない。
僅かに地面をかすった轟の手を伝って、尾白の背面は尻尾もろとも氷漬けにされていた。
Aの赫根もいつの間にか凍らされており、このままでは氷が背中にまで到達しかねない。
やむなく吊るし上げていた鱗赫をしまうと、轟は猫のように半回転しながら器用に着地した。
「動いてもいいけど、足の皮剥がれちゃ満足に戦えねぇぞ」
「・・・くっ」
敗北、と言う二文字が尾白の頭の中に浮かんだ。
これじゃあ余りにも終わりとして呆気ないじゃないか。第1戦のような過度な激しさまでは求めなくとも、もう少し粘れただろうにと背後に気をやらなかった自分を悔やむ。
「そんなに気落ちすんな、まだ戦えるよ」
その時、俯く尾白の頭上から声が聞こえた。
パッと見上げると逆さまで微笑むAがユラユラと体を揺らしてまっすぐ尾白を見ていた。
戦闘服の色も相まって、コウモリみたいな彼女は澄んだ赤い瞳を黒く滲ませていき、核に歩み寄っていた轟はその足を止める。
Aの腰から出てくる無数の尾のような、触手のようなものを見て、彼は理解できないと言うように首を捻った。
「そのまま戦おうってのか、無謀が過ぎるぞ」
轟が見上げる先には凍って天井にくっついたままの白い手足があった。
「悪く思うなよ」
自由に動くその触手だけで戦おうと言うのならば、触手が生えている腰付近まで凍らせてしまえばいい。
スッと差し出された手に応じるように、手足の氷は腕や太ももを伝ってせり上がってくる。
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はるにゃー(プロフ) - わかります...!! (2018年3月14日 20時) (レス) id: a8130d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
ておどーる(プロフ) - はるにゃーさん» コメントありがとうございます!良いですよね、、、ハスミンのサイコパスみが最高です( ˘ω˘ ) (2018年3月14日 20時) (レス) id: 5fabf8878f (このIDを非表示/違反報告)
はるにゃー(プロフ) - 悪の教典面白いですよね! (2018年3月14日 20時) (レス) id: a8130d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ておどーるさん» 次からは気を付けた方がいいですよ〜更新頑張ってください! (2018年3月13日 21時) (レス) id: b712ea93b0 (このIDを非表示/違反報告)
ておどーる(プロフ) - 雪兎さん» 御報告ありがとうございます!確認不足申し訳ないです、解除いたしました。 (2018年3月13日 21時) (レス) id: 1b153ac47e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ておどーる | 作成日時:2018年3月13日 20時