1 入学[1] ページ4
「制服って思ってたよりもずっと窮屈なんだね」
「それが制服ってもんにゃあ」
手慣れた様子でネクタイを結ぶチェシャは、落ち着きのないAをチラリと見てケラケラと笑う。
「変じゃない?」
取り残したスカートの仕付け糸を指先で弄びながらAは尋ねる。ネクタイを結び終えたチェシャは鏡と向き合っていた体を半回転させて向き合った。頭から爪先まで舐める様に見つめてから、ニタ、と口を歪める。
「君が喰種だって事を忘れちゃうくらいには、立派に高校一年生だにゃ」
「そう、それを聞いて安心した。お前は”猫にも”衣装だね、二本足で立って制服まで着ちゃってサァ、ご立派、ご立派」
「お褒めに与り恐悦至極にゃ」
皮肉を皮肉で返すこのやり取りは最早挨拶のようなもの。口だけがアイロニーを吐き出して、他の器官は朝の準備を進めて行っている。
「まあでも十分気をつけるにょよ?君の正体がバレれば
「わかってるよ、大丈夫、美味しそうにご飯を食べる練習は吐くほどやったから」
「最初から吐いてたにゃ」
「黙ってて」
喰種の味覚は人間とは違う。人の食べるものなど吐き出してしまいたくなる程不快極まりなく、栄養も摂取出来ない。今は白うさぎが残していった柘榴の実に似た物が食事の代わりになっている。思うにあれは喰種の栄養源となるRc細胞を凝縮させた物なのかもしれない。月に一粒、それを食べる事でなんの問題も無く過ごして来れたがこれからはそうもいかない。とはいえこの世界に喰種はいないからバレるも何も無いのだが。それでも三年間昼食抜きはいただけないだろう。
「菓子パンが一番食べやすいんだよ」
「ランチラッシュのご飯が食べられにゃいにゃんて、こればっかりは同情するにゃ」
「いらん同情だね、あんなの食べたら1週間は寝込みそう」
予めコンビニで購入していたイチゴジャムパンをリュックに詰め込んでAは言った。雄英の大食堂を切り盛りするヒーロー、ランチラッシュ。一流の料理を安価で味わえるのは育ち盛りの高校生にとってありがたない事この上ない筈なのだが。チェシャは哀れみの視線を送って肩を竦めると、自身のリュックを引っ張り出して背負う。
「そろそろ出なくちゃ遅刻するにゃあ」
「ん、準備おっけ」
新品の制服を汚さないよう気にかけながらシャターを開けると、頬を撫でる春の風。この世界に迷い込んでから見た二度目の桜がいつの日かと同じように髪に絡まった。
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はるにゃー(プロフ) - わかります...!! (2018年3月14日 20時) (レス) id: a8130d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
ておどーる(プロフ) - はるにゃーさん» コメントありがとうございます!良いですよね、、、ハスミンのサイコパスみが最高です( ˘ω˘ ) (2018年3月14日 20時) (レス) id: 5fabf8878f (このIDを非表示/違反報告)
はるにゃー(プロフ) - 悪の教典面白いですよね! (2018年3月14日 20時) (レス) id: a8130d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ておどーるさん» 次からは気を付けた方がいいですよ〜更新頑張ってください! (2018年3月13日 21時) (レス) id: b712ea93b0 (このIDを非表示/違反報告)
ておどーる(プロフ) - 雪兎さん» 御報告ありがとうございます!確認不足申し訳ないです、解除いたしました。 (2018年3月13日 21時) (レス) id: 1b153ac47e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ておどーる | 作成日時:2018年3月13日 20時