27 猫を追う[4] ページ32
視線の先には屋上へ出る扉。
お互い黙りこくってその一点を見つめていると、聞こえていた足音が止んだ。
回るドアノブ、音を立てて開くドア。
そこから現れたのは、紫色の立った髪に酷い隈をこさえた男子生徒だった。
彼は驚いた様に目を少しばかり見開いて、ドアノブに手をかけたまましばらく動かない。
こちらもA組の誰かだとばかり思っていたから、現れた見ず知らずの生徒に不意を突かれてしまった。
両者とも何も言わないまま数秒が経過。
しかし最初に動いたのは彼でも、自分でもなく膝の上で丸まっていたチェシャだった。
ひょっこりと脇腹から覗く様に紫髮の少年を見て、ニャア、と鳴く。
「・・・その猫、アンタの？」
「まあ、そんな感じ・・・・」
実は兄なのだけれど、とは言い出せなかった。
自分の中では完全に猫のチェシャと人間のチェシャは別物だと思っている、否、思い込んでいる。
なぜなら私は猫派だから。
目の前に猫がいれば、それが皮肉垂れの戯言製造マシーンだろうが血の繋がらない兄だろうが関係ない。
その蠱惑的な身体さえ触れればいいのである。
だが実際口に出せば、”兄を膝の上に乗せて撫で回している妹”というちょっと危ない事態になるのだ。
「珍しい色の猫だな」
「・・・まあ、そこらへんにいたら怖いと思う」
そう言ってチェシャの喉を撫でてやる。
ゴロゴロと鳴くだけで、何も言わない様子からすると、チェシャもどうやらただの猫のまま貫き通すらしい。
赤い時点でただの猫と言えるのか疑問だけれど。
それにしてもこの生徒、何か用事があってきたのだろうか。
それとも自分と同様逃げてきたのか。いや、それはないか。
「触っても、いいか」
歩み寄ってきた男子生徒は、目の前でしゃがんでちょいちょいとチェシャに指を差し出している。
一応猫らしく振る舞って臭いを嗅ぐチェシャを見て、視線で「大丈夫？」と訴えると返事の代わりにウインクが返ってきた。
「どうぞ」と抱いていたチェシャを彼に差し出す。
持ち上げてみると、どこまで伸びるんだというほどに胴体が伸びきっているチェシャを見て、彼は薄く笑んだ。
「猫好きなの？」
「ああ。購買寄ろうとしたら見かけた。珍しかったからさ」
「なるほど・・・」
馬鹿だろ、と彼の膝でうっとりしているチェシャを睨みつける。
ミャーとか細い鳴声が漏れた。
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ゆあ - すみません。いくら探してもツイッターのアカウントが見つけられないんです。どうやって探せばいいんですか？ (2019年9月5日 21時) (
レス) id: b0f6bda559 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - めっさ面白い！続きが見たいいぃぃぃぃ!!!!! (2018年9月9日 0時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
小幸(プロフ) - 面白かったです！これからも頑張ってください！！リアルの方でも頑張って！！ (2018年5月18日 2時) (レス) id: 4d03ac968f (このIDを非表示/違反報告)
白ちゃん - 作者様愛してます！この話大好きです！更新頑張ってください！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: a5c2574b45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ておどーる | 作成日時：2018年4月7日 0時
