☆ ページ41
「お前も何か面白いものをみつけたら、絵でも写真でもいいから記録を残してみたらいい」
「分かりました、今度会った時は上達した絵を見てください」
約束してから何年か経ったある日、第7階層の囚人の話を耳にした。少し興味があり、第7階層まで、行ってみるとそこには見覚えのある姿があった。彼もこちらに気づいた。
「セオドアさん、ですか?」
声をかけると、コチラを見てきた。やはりあの時の人だ。何故こんなところに?と思うが、思うような言葉が出て来ない。自分の語彙力がここまでなくなるとは思わなかった。お互い気まずい雰囲気が流れた。スケッチを教えてくれた、あんなに優しい人が、こんなところに居ていいはずがない。陸5年目として、良いか悪いかの区別はつくようになった。彼が悪いことをするはずがない。神様でも間違えることもあるのだろうか。母親には「神様の言うことは絶対ですよ」と言われていたので、そんなものだと思っていた。どうやら現実は違ったものだったようで、こんな残酷なものだとも思わない。
その日は、何も話せずにそこから立ち去ってしまう。自分がこんなに弱いとは思わなかった。海の中では、かなり強い方でメガロドンのような巨大なサメにも勝っていたのに。陸ではここまで弱い存在になりうるのか。
一週間経った頃、また第7階層に行く。心の整理をさせていたのだ。片手にアリアが作ったおにぎり。これはアリアが好きな鮭のおにぎりである。
「セオドアさん、良ければこれを食べてください。僕が好きな具材が入ってます」
セオドアはそれを受け取ってくれた。それはとても嬉しいものだった。ここで会った時、何も話せずに帰ってしまったから、怒らせてしまったのかと思ったが、彼はもしかしたらアリアの心情を汲み取ってくれたのかもしれない。
「僕、ここから出る手伝いします。あなたはここにいるべき人ではない」
そう言うと、セオドアは口を開けてこう言った。
「……助けてくれるのはありがたいが、死刑囚を逃したらお前も面倒なことになるだろ」
「それは……」
何も言えないというのは、その覚悟がないということだ。とても悲しく思える。助けられないという気持ちや、自分がどれだけ軽い言葉で彼にこんなことを言ってしまったのか。
すると、昔言われた母の言葉が、耳に響いた。
「時に、神様は気まぐれで残酷な道を辿らせる」と。
Be Sweet【フロウ・ラグランジュ】→←理想と現実、幸福と憂鬱【アリア・リッチ】
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開(プロフ) - いろいろな作品更新されたあとありますがPCが重くて間違えて触ってしまい更新された状態になってしまいました申し訳ないです、、一応触ってしまっただけなのでみなさまの文章に言葉が欠ける、増えるなどは無いです申し訳ありません (2022年3月21日 7時) (レス) id: 62c5ad2de3 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 作者様を巻き込みたくないので出来れば他の作者のCSSに変えた方が良いと思います (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。私のCSSを変えていただけないでしょうか?どうやら再配布禁止の画像を使っていたので申し訳ないですが。大変ご迷惑をかけしました。全部が違反した分けではないのですが保証も出来ないのでよろしくお願いします。 (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - Melcheさん» 更新お疲れ様でした! シャルルさんとテレーゼさんは前からのお知り合いだったんですね。それにしても、シャルルさん視点のお話、面白いですよね笑 軽快な書き方がとても好きです! (2021年2月22日 23時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
Melche(プロフ) - 更新終わりました!最後のオチが上手くいかなすぎて泣きそうになりました() (2021年2月21日 20時) (レス) id: 10c523e9ad (このIDを非表示/違反報告)
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