友引に天の原【オウィス】 ページ29
出演への犒いをば。
。
渺々たる積荷の紐を解いて早三日。時期に此処を発する事となるが、少し感傷にでも浸ってやろうと自室を抜けた。窓の外には仄かな月光さえ差しておらず、深夜の一言で片付けるのには闇に呑まれ過ぎている。
幾度となくその屏障を越境したが、やはり灯が無ければ足元は覚束無い。文字通り一寸先は闇な人が二人も通れぬ階段を下へ下へと進んで行く。
じゃらじゃら、と碰る音には興味が湧かない。金貨なんて、商相手が居て初めてその威力を発揮する。金はあればあるだけ人は自惚れる。昔己からそうであった。時さえ掌握する為政者に限ってその力を己の物と履き違え、一時の栄耀の後に泡沫の如く廃頽する。侈に一喜一憂させられるその様はなんともまぁ無様であり、後世を担う稚児がその魔に呑まれぬ事を祈るばかりだった。
｢あれ、来てたんだ。｣
てっきりもうお休みになったとばかり。
半歩下がって恭しく頭を垂れて見せれば日の差し込まぬこの地下階層でも光沢を帯びる、腰まで伸びた金糸が彼の顧みる動作に合わせて踊る。
以前訪れた時にあった血溜まりは姿を消し、その対比を見る事は叶わなかった。
｢意外、と？｣
｢いや。やっぱり信仰深いと思ってね。｣
慈愛に満ちた微笑を湛え、くるりと此方に体ごと向く様には埃も舞わなかった。
何時だったか。最初に彼を此処で目にした時は内心驚きを隠し切れなかった。聖人の立入るべき場所でないのは重々承知の上、暇さえあれば此処に巣食っていたが、この生死の、生き血の混じる場所に彼の存在は切って貼られた様に見え、肩書き故か不自然にも見えた。だが、同時に憧憬が、哀悼が、そしてなにより感銘を感じざるを得なかった。
死と題された救済を、自分は此処に感じている。貴方様には感謝してもし切れぬと。至極平凡な日は温過ぎる。その中、こうして神への愛を窺い知る事が出来たのだと。
一人の宣教師と教えを説く大司教様という立場を忘却し、恍惚とした心情を饒舌に吐き散らかした。
我に返ってから己の愚直さに頭を抱え、青筋を立てたが、彼も嘉賞の言葉を送って下さった。相愛や使徒という観測よりも、彼こそが神の成り代わりなのではないか、というセオリーの方が幾分現実味を感じたのだ。
｢惜しいなぁ。｣
君の背中が伽藍堂でなければ、私の説は真と成るのに。
彼の、神の御前であったが、ぽつりと本音が零れ落ちる。
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開(プロフ) - いろいろな作品更新されたあとありますがPCが重くて間違えて触ってしまい更新された状態になってしまいました申し訳ないです、、一応触ってしまっただけなのでみなさまの文章に言葉が欠ける、増えるなどは無いです申し訳ありません (2022年3月21日 7時) (
レス) id: 62c5ad2de3 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 作者様を巻き込みたくないので出来れば他の作者のCSSに変えた方が良いと思います (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。私のCSSを変えていただけないでしょうか？どうやら再配布禁止の画像を使っていたので申し訳ないですが。大変ご迷惑をかけしました。全部が違反した分けではないのですが保証も出来ないのでよろしくお願いします。 (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - Melcheさん» 更新お疲れ様でした！ シャルルさんとテレーゼさんは前からのお知り合いだったんですね。それにしても、シャルルさん視点のお話、面白いですよね笑 軽快な書き方がとても好きです！ (2021年2月22日 23時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
Melche(プロフ) - 更新終わりました！最後のオチが上手くいかなすぎて泣きそうになりました（） (2021年2月21日 20時) (レス) id: 10c523e9ad (このIDを非表示/違反報告)
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