私は世界一の苦労人ではないだろうか。

苦労その８ ページ10

「寿人なら外周行かせたとこ」

「この時間からか？」

もういつもの湊に戻ってるよな？

これからまた走らされたりしないよな？

そんな不安が伝わらないよう、平然を装う。

「怪我してるとはいえ、少しは動かないと復帰した時困るから」

「そうか...」

大丈夫そうだ。

てか、これは俺も残っといた方がいいのか？

「あ。私残っとくから帰ってていいよ」

「大丈夫か？」

もう暗いから、学校の敷地内でも少し不安だ。

「何言ってんの。そんなの今更じゃん」

「それもそうだな」





２年前、俺たちがまだ１年だった頃から。

毎日遅くまで居残り練習していた水樹を待っていたのは、コイツだった。

「ってわけだから。早く帰った帰った！後のことは敏腕マネージャーに任せなさい！」

「自分で言うのかよ」

「へへへ。でも否定はしないんでしょー？」

「まぁな」

コイツには３年間、世話になりっぱなしだからな。

「...全国。絶対連れてってやる」

「...うん。期待してる。１・２年に見せてやんなよ」

「...バーカ」

「はあ⁉いきなり何⁉私何も言ってないじゃん‼」

お前に言ったんだよ。

でも、優勝じゃないと礼にはならないな。

決意を新たにした時。

春の夜空に、満月が浮かんでいた。

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