思わぬハプニング ページ29
ほら、言わんこっちゃない。
「あれ、資料は?どこ行ったんや」
「次の企画の資料なら私が持ってるけど」
「いや、ちゃうねん。一昨日やってここ置いててんけど」
企画書の資料がなくなったらしい。それも結構大事なやつ。
「手分けして探そうか?」
「いや、今忙しいやろ。一人で探すわ」
そうは言いつつも、表情はひきつり、確実に焦っているんだろう。しげってほんと、何でこういう時に限って、大事なもの無くしちゃうんだろう。
「…大丈夫なんすかね、俺、やっぱり手伝いに、」
「ごめん小瀧くん、藤井くんのこと任せてもいい?」
「あ、はい。それはいいですけど、」
はぁ。よし、久しぶりに一肌脱ごう。
「神山くん、ごめんね一人で任せちゃって」
「あ、いえ。それより重岡さん、」
「あぁ、私も手伝うから大丈夫。ありがとね」
神山くんには小瀧くん達と合流してもらって、代わりに仕事を終わらせる。
「さて、と。しげはどこ行ったんだろ」
ついさっきまでは課の中を探し回っていたのに、周りを見渡してもしげの姿は見当たらない。
「しげー、どこ?資料見つかった?」
近くの通路やら、会議室やらを見ても、やっぱりしげはいなくて。
「最後はここしかない、しげ?」
滅多に来ない奥の応接室を覗けば、ソファーの下を見つめ、必死に手を伸ばすしげがいた。
「何してんの?」
「ちょ、今話しかけんとって。もうちょっとで届きそう、やねん」
腕が引きちぎれるんじゃないかと思うくらいに伸ばした手は、どうやら何かを掴んだらしく。
「やった、見つかった!」
喜んだのも束の間、資料を見てまた青ざめていく。
「これ、違うやつやん」
「え、結局違うの?」
「はぁー、せっかく取れたのに。あーもう!どうしたらええねん!」
部長や濱田さんがいる時はふざけてはいるけど、こんなミス滅多にしないのに。
「家に持ち帰ったとかは?」
「それは絶対ない。一昨日必死に終わらせて帰ったんやから」
これ、このままいくと、かなりしげの立場が危ういんじゃないか?取引先は昔からお世話になってるところだし。
「他に探してないとこは?」
「ない、全部見た。全部見たんや…」
さすがにここまでくると、本当にかわいそうで。その時頭をフル回転させて、思い付いた作戦がこれだった。
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作者名:七月雪 | 作成日時:2018年3月17日 21時