新たな気持ち ページ27
「え？あ、いやー、別にそのためだけやないねんで？」
なんて、笑いながら頭をかき、目はキョロキョロと左右に動いているのに。こんなの、どう見ても私のためじゃないか。
「ほんと、濱田さんって掴めない人ですね」
「それは、褒め言葉として受け取ってええんかな？」
「もちろんです。濱田さんは私にとって、頼れる上司ですから」
「そうなんや、何か嬉しいな」
濱田さんは本当に不思議な人だ。前々からそう思ってはいたけど、今になるとよく分かる。
「帰りましょっか」
今まで関わってきた人と全く違う人なのに、一緒にいると、不思議と心地がよくて。
「また行こうな、今度はもっとおっきいの釣ろう！」
濱田さんの笑顔を見ると癒されるし、安心する。
「…濱田さんって、もう彼女出来ちゃいました？」
そのせいだろうか。ふと、頭に浮かんだ彼女の存在。頼れる上司なら、そんなこと私には関係ないはずなのに。
「おらんよ、いつでも欲しいねんけどな」
なら、私は？なんて、らしくもないことを言いそうになるのは、やっぱり最近、ストレスや悩みが溜まっていたからなのかな。
「そうなんですね」
「早瀬さんは、欲しくならんの？」
「私は、しばらくはちょっと…今はゆっくり考えたいなって」
藤井くんのことだって、部長のことだって。まだ何も解決してない。あきとのことも、結局はまだ乗り越えられてない。
なのに。濱田さんといると、自分が自分らしくなくなる感じがする。
「そうやな。ゆっくり考えて、自分が思ったように、後悔せえへんように、したらええと思う」
問題が山積みなのに、それを放っておいて、濱田さんのもとに飛び込みたくなった。
「わざわざ送ってもらって、すいません。今日は楽しかったです。また、会社で」
「うん、またな」
濱田さんの背中が見えなくなるまで見送って、何かこの感じ、久しぶりの感覚だなって。
恋してる時の、どうしようもなくワクワクする感じだったり、心がふわって温かくなるような、そんな気持ち。
「好きかもしれない、濱田さんのこと」
改めて口に出すと、恥ずかしくなる。もしそうなら、いつからなんだろう。なんて考えを巡らして、学生時代に戻ったように、その日の夜は、眠れなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
