爆弾 ページ21
「おい、休憩やぞ」
後ろから聞こえた声に顔を上げれば、課には私としげだけが残っていて。
「あれ、みんなは？」
「昼やから飯でも食べに行ったんやろ」
「え、何で私置いてかれたの」
いつもなら一言でも声を掛けてくれるのに。
「まぁ、そういう時もあるんやない？」
罰が悪そうに頭を掻く彼に、何か他に理由がある気がして、問いかける。
「しげ、何か言ったんでしょ」
「っ別に、言うて、へんし」
さっきから何故か、一度も目を合わせようとしないし、絶対何かあるに決まってるのに。思い当たる節が、あるような、ないような。
「ええねんお前は。いらんこと気にせんと、はよ飯行くぞ」
私の鞄を持って、強引に腕を引いて歩いていく。
「ねぇ、それで何でかはもう教えてくれないの？」
まさかとは思うけど、しげがただ私と二人で食べたかったからなんじゃ、なんて。いや、それはないのかな。昨日の今日だけど、しげはそんなことしなさそうだし。
「…知りたいなら後で本人に聞け」
そう言って指された方を見れば、私としげ以外のみんなが揃いに揃って、うどんをすすっている。
「え、今から合流するの？」
「よし、もうええみたいやな」
私の声を無視して、みんなの元へと歩を進める彼。すると何らかの気配を感じ取ったのか、藤井くんだけがこちらへ振り返って、ばちりと目が合った。
「Aさん、としげ…」
ボソリと呟いたその声に、今度はみんなが一斉に振り返る。
「あ、やっと来たんやな。はよ座り〜」
「遅いっすよ、何してたんですか」
濱田さんと小瀧くんだけは歓迎してくれてるみたいだけど、神山くんの表情はまるで幽霊を見た後のように強ばってるし、部長と藤井くんは何とも言えない顔をしてる。
「えと、何で私、置いてかれたのでしょうか？」
本人に聞けと言われたはいいが、その本人が誰なのか分からないままでどうしろと言うのか。
「さっきからうるさいねん、何なん、理由教えてって」
しげも呆れたように話しているのに、その本人が誰なのか、誰一人一向に教えてくれそうにないのは何故なのか。
「…流星と、淳太が、その、言い争いみたいなんなってしもうて、」
誰も話す気がない空気を読み取った濱田さんが代わりに話始めた。
「正確に言うと、小瀧もやけどな」
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
