混乱 ページ20
「おはようございます」
「おはよう、早瀬」
課に向かえば、今日も部長が先に来てて。
「何か今日、いつもより元気やな」
コーヒーを片手に、珍しく険しい顔。
「そうですか？」
そんな風に見えるんだ。なんて思ってたら、
「藤井と昨日帰ったから？」
何の前触れもなく出た藤井くんとの話に、思いがけなく反応してしまう。
「え、」
「あ、いや。二人ともおらんから一緒に帰ったんかなって思ったんやけど。違うかった？」
やっぱりそう思うんだ。しげと同じように、部長も誤解してるんだろうか。
「えっと、それは、」
「部長、違いますよ。俺、Aさんと昨日別々に帰ったんで」
どう説明すればいいか迷っていれば、後ろから聞こえてきた声に思わず振り返る。
「…藤井くん、」
「そうか。てっきり二人で帰ったと思って。誤解してごめんな、二人とも」
「いえ、俺は全然平気です」
「あ、私も…全然、平気です」
部長に本当のことは言わずに嘘をついて。何も悪いことはしてないはずなのに、何だか変な気分。
「Aさん、大丈夫ですか？」
そのことで未だぼーっとしてる私に藤井くんが肩を叩く。
「うん、大丈夫。ちょっと考えごとしてただけだから」
「ならよかったです。今日も仕事、頑張りましょうね」
「…そうだね」
昨日のことがまるでなかったみたいに、いつも通りの彼。あまりにも普通すぎて、何か、こっちが戸惑うんだけど。
「おはようございます、早瀬さん」
「なにボサッとしとんねん。はよ仕事せえ」
それに加えていつの間にか来ていた小瀧くんとしげに話しかけられ、ますます状況が混乱してくる。
あれ、昨日、確かに色々あったよね？
「早瀬さん疲れてる？少し休んでから仕事してもええよ？」
挙げ句濱田さんにまで心配されて。
「大丈夫です、何かすいません」
自分を落ち着かせるためにとりあえずパソコンと向き合って、深呼吸。落ち着け、私。今は仕事中なんだし、普段通りでいてくれる方がより私には好都合なはず。
「やっと元に戻ったな」
その後しげが何か言っていたらしいけど、その頃にはパソコンに集中してて、周りの音は何一つ聞こえていなかった。
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
