ダサい告白 ページ18
バタンと扉を閉めて、ため息をつく。徐に携帯を取り出して、画面に指を走らせた。
「もしもし、」
「しげ、今どこ？」
「もうすぐ家の前」
「今から会えないかな？」
約束を忘れて藤井くんと抜け出したくせに、今更会いたいなんて、わがままなんだろうか。
「…Aの家まで行くわ、中で待ってて」
だけどしげは、そんな私を甘やかしてくれる。ううん、甘やかしてくれるように仕向けてるのは、本当は私なのかもしれないけど。
「ごめんね、夜遅いのに」
「ええよ、全然平気」
はぁはぁと息が上がってる。駅から走ってきたんだろうか。
「とりあえず、うち、上がる？」
「うん、お邪魔します」
中に入って、飲み物を取りに行こうとすれば、それをしげの左手が制止して。
「まずは座って話しようや」
あまりにもまっすぐな瞳で見るから、黙って頷いて向かい合わせに座る。
「話する前にひとつだけ、聞いてもええかな」
「うん、なに？」
ぐっと手に力を入れて、深呼吸をする彼。
「藤井と付き合ってたりする？」
「藤井くんと？なんで？」
「あ、いや。ちゃうならええねん」
はぁーと大きく息を吐いて、また大きく息を吸い込んだ。
「好きやねん、Aのこと。会社入ったときからずっと」
告白してるはずなのに、目線は合わなくて。照れているのかと思えば、眉間にしわを寄せて、うつむき始める。
「ほんまはこんなはずやなかってんけどな」
「え？」
「焦って告白って、一番ダサいやんな」
ははって空笑い。頭をグシャグシャにして、前髪から覗く表情は寂しそうだった。
「そんなことないよ」
しげはかっこいい。いつだって、真剣でまっすくで。一度もぶれたことない、ちゃんと自分を持ってる人。私とは全然違う。
「藤井の方がええよな、イケメンやし」
「っ、しげ、」
「分かってんねん、ダメなことくらい。やけど、ずっと好きやってん。簡単に諦めるなんて出来ひんやんか…」
勘違いしてるのに、上手く言えない。それは多分、藤井くんが気になるからとか、好きだからとかじゃなくて。
「なんで俺じゃないん」
自信がないだけ。はっきりと言葉にして、その言葉の責任を取るのがただ、怖いだけ。あやふやにして、逃げようとする自分を見るのが、嫌なだけなんだ。
「しげ、私、」
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
