言葉の意味 ページ16
みんなが私たちを探している中、私たちは意外な場所に来ていた。
「藤井くん?」
どうして彼は、ここを知っているんだろう。
「俺、Aさんのこと好きなわけやないです」
ならどうして、なんて。聞かなくてももう、見当はついてる。
「あきとの友達、なんだよね?」
藤井という名前を、どこかで聞いたことがあった。それがあきとだったことを、すっかり忘れてしまっていたけど。
「あきとからいつも聞いてたんです、Aさんのこと」
あきとの方が年上なのに、藤井くんがしっかりしているせいか、二人に違和感すら感じなくて。
「初めて出来た、年上の友達で」
誰とでも分け隔てなく話す彼のことだから、きっとすぐに仲良くなったんだろう。
「こんなこと俺が言うことじゃないですけど、Aさんのこと、好きやったって」
いつも楽しそうに話すから、俺、彼女やと思ってて。だけど、兄弟やって言うから驚いたんです。
「あきとが亡くなったって聞いたとき、一番に浮かんだのはAさんでした」
また、悲しそうな瞳。似ているのは長く一緒にいたからなのか。それとも、
「俺、Aさんのこと好きやないのに」
彼と同じように、私が好きだからなのか。
「望に何言われたんですか」
きっと、藤井くんは何かを、一人で抱えてる。
「何も、言われてないよ」
だからこそ、小瀧くんが話したことを言っていいのか、言うべきなのか。今はまだ分からないから。
「藤井くんは、小瀧くんと何かあったの?」
二人の間には、分厚い壁があるように見えた。藤井くんが抱えているのは、それが原因なのかもしれない。
「友達の、望の彼女を奪ったんです」
ぽつり、ぽつりと紡がれた言葉には、藤井くんの悲しみが含まれていて。小瀧くんの彼女を奪ったのも、わざと、ではないんじゃないかと思った。
「昔から何か、運悪くて。気付いたら誰かを、傷付けてるんです」
無意識の言動で、誰かを引き寄せ、その代わりに誰かが傷付いている。
「でもそれは、藤井くんのせいじゃないでしょ?」
小瀧くんは誤解しているんじゃないか。話し合えば二人は、理解し合えるんじゃないか。
「望に言われて、気付いたんです。お前なんか、嫌いや。もう顔も見たくないって言われてから」
俺って、最低なやつやったんやなって。
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作者名:七月雪 | 作成日時:2018年3月17日 21時