意味深な言葉 ページ15
「なぁ、」
「なに？」
小瀧くんがわざわざ呼びに来てくれて、ひとまず言い争いはなくなったけれど。
「さっきのやつ、後で話したいんやけど」
真剣な顔で話すしげに思わず緊張が走る。
「わかった。じゃあ、帰りに話そっか」
その言葉を聞いてすぐ、足早に席へと戻っていくしげを不思議そうに小瀧くんは見つめてて。
「早瀬さん」
そんな小瀧くんが突然立ち止まって、しげとは違う真剣なまなざしで私を見つめる。
「しげのこと、どう思ってますか」
「どうって、同期でよく話す友達、みたいな」
「じゃあ、流星…藤井のこと、どう思います？」
藤井くん。どうして小瀧くんがそんなことを聞くのかは分からなかったけれど、あまりにも真面目に聞くから多分、彼にとっては重要なことなのかなって。
「こんなこと言うの、だめなんだろうけど。苦手かも、しれない」
「なら、流星に何言われても揺らがんといてください。お願いします」
深々と頭を下げて、懇願する彼は藤井くんと何があったのか。私には教えてくれそうもなくて。
「うん、わかった…」
そう言えばいつものように笑う小瀧くんが戻ってきて、何とも言えない気持ちになった。
「二人、何してたん」
「世間話、別にそれくらいええやろ」
その言葉に誰よりも反応してる藤井くんを横目で見れば、視線に気付いたのかぱちりと目が合う。
「っ、」
何故かは分からない。だけど、初めて見る悲しそうな瞳に引き込まれそうになって、途端に目をそらした。
「早瀬、ここ座れば？」
「はい、失礼します」
それから逃げるように部長の隣に座って、はまださんと部長と話をして、この時間が早く終わればいいなんて、思ってた。
「もう、帰ろか」
部長の言葉にみんなも頷いて、会計を終わらせて店の外に出る。
「Aさん」
何となく、話しかけられるような気がしてた。
「このまま二人で、抜け出しません？」
きっと彼は分かってるんだろう。帰り道私が、一人で帰らないことも、まっすぐに家に帰らないことも。
「抜け出さない、って言ったら？」
試すつもりなんてなかった。ただ少し、似ていたから。
「ずるいですね」
あきとと少し、似ていたから。
「あいつ、どこ行ってん」
「あれ、早瀬は？」
「え、早瀬さんいないんすか」
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
