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紫耀の腕に包まれたまま、
彼がさっき発した言葉の意図が何なのか
必死に正解を探す。
＿＿A以外の人、好きになったことないから。
私の耳には確かにそう聞こえた。
紫耀が
私を
' 好き ' ？
ありえない。
天と地がひっくり返っても
それはありえない。
そう思ったけど
彼の顔は嘘をついてるようには見えなくて
脳が激しくサイレンを鳴らす。
紫「ちょっとここで休もっか。」
紫耀が私を腕から下ろしたのは
パーティ会場の二階にある部屋の
少し高級そうなソファーの上。
「あ、ありがと。
紫耀にはいつも助けられちゃってるね。」
彼の顔を見れなくて
視線は自分の足元に向けたままで呟いた。
紫「ごめんね。」
「え？」
紫「俺、Aを助けてるんじゃないんだ。」
彼の口から発せられた謝罪と
私のことを助けた訳じゃないという言葉に
頭の中はさらなる混乱を引き起こす。
紫「Aを
不幸の渦に巻き込んでる。」
不幸の、渦、、？
顔を上げて
紫耀と視線を合わせれば
熱を帯びた瞳に酔いそうになった。
紫「好きだよ、A。
ずっとずっと前から大好きだ。」
時が、止まった。
これは、
ああ
きっと悪い夢だ。
目の前の紫耀は幻想で
彼の発した言葉は空耳だ。
紫耀の顔が不意に近づいてきて
呆然とした私の顔に
触れるか触れないかの位置で止まる。
紫「俺、ほんとは触れたことあるの。
この赤い唇。」
彼の人差し指がそっと
私の下唇に置かれた。
確かに感じる指の感触も
きっと夢の中のことだ。
ねえ、そうだよね？
それなら、
今すぐにでも
この悪い夢から目覚めさせてよ。
鍵をかけたはずの
胸の奥の扉が
完全に開いて
もう戻れなくなる前に。
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作者名：Kipi
| 作成日時：2019年1月14日 4時
