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人混みを駆け抜ける。
君を、助けたい。
君のヒーローになりたい。
「あの時、
貴女が邪魔をしなければ！
私は紫耀くんと幸せになれたのに！！」
同じ方向から聞こえてくる罵声。
誰だ、これ。
声の主は分からないけど
こいつ正気か？
俺と幸せになれた、とか
虫酸が走る。
俺が幸せになれるのは
Aといる時にだけなのに。
もうすぐ、声の元に着く。
A、待ってて。
俺が助けに行くから。
廉「何してんねん！」
でも、着いた時には
君を守ろうとする先約がいた。
そうじゃん。
彼女を助けられるのは
廉だ。
あと一歩でもはやく動いてたら
きっと俺の方が早く着いたのに。
この差は
君を幸せにできるかどうかの差と
比例してしまうのだろうか。
廉が彼女に一歩ずつ近づいていく。
ここから去ろう。
きっとそれがベストの選択。
そう思ったのに
Aを囲んでいた集団が
廉が歩いてくると同時に
少しずつ後ずさって
俺の前に視界が開ける。
床に尻餅をついた
彼女の後ろ姿が目に入る。
紫「えっ」
今日、初めて見た彼女のドレスが
あの色だった。
咄嗟に彼女の元へ近づく。
はやく。
廉よりはやく彼女の元へ。
このドレスを着た彼女だけは
俺のものでいてほしい。
着ていた黒のジャケットを脱いで
彼女の肩にかける。
廉より先に、
彼女に触れた。
紫「廉、ごめん。
いま、Aが苦しんでるのは
俺に関することだから。
今だけ、コイツ譲って？」
理由を適当につけて、
彼女を抱いて持ち上げる。
深紅のドレス。
俺色のドレスを着たAだけは、
俺に独占させてはしい。
いつか彼女が言ってた。
「紫耀って深紅みたい。」
紫「どういうこと？」
「私の中の紫耀のイメージが
その色にぴったりなの。
クリスマスに薔薇を貰って
部屋に飾ると
いつでも紫耀が隣にいてくれる気がするの。」
君はそう言ってた。
てことはさ、
そのドレスは俺ってことでいいの？
俺に隣にいてほしいから
そのドレスを選んだの？
都合のいい妄想ばかりが
頭を駆け巡って、
紫「俺、こいつ以外の人を
好きになったことないから。」
そう目の前の女集団に冷たく言い放つ。
一度口にした想いを
俺は
もう、多分
止められない。
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作者名：Kipi
| 作成日時：2019年1月14日 4時
