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運び込まれたのは廉くんの家。
どうやら公園からすぐの所にあるらしい。
私をおぶって
ここまで運んできてくれた彼の背中は
細い体の割に大きくて
彼も男の人なんだなと思う。
廉「これ飲んで早く身体温めて。」
そういって渡されたのはホットミルク。
ふーふーと少し冷まして飲むと
身体の奥の方まで染み込んで
わたしの心の何かを緩める。
貸してもらった着替えからする
柔軟剤の香りは、
目の前の廉くんみたいに優しい。
廉「これで目も冷やしとき。」
保冷剤をくれた彼は
私に鋭い言葉を投げつけた時とは全然違う
優しい顔をしていた。
きっと、何があったか聞きたいんだろうな。
さっきからこっちを見ては
何でもないと首を振る彼を見てそう思う。
「廉くん。」
ん？と顔をこちらに向けた廉くんは
紫耀と同じくらい綺麗な顔立ちで
類は友を呼ぶって本当だなと思う。
「わたし、
紫耀とサヨナラしたよ。
紫耀を自由にしてあげたよ。」
わたしって可哀想かな？
みじめかな？
何年一緒にいても、
好きになってもらえなかった
哀れな女？
廉「そっか。」
彼が発したのはただその一言だけで、
でもその一言には
たくさんの想いが込められてる気がした。
「ごめんね。
廉くんにも沢山迷惑かけたね。」
もう泣かないと思っていたのに、
無意識に声が震える。
「廉くんは、
これからも紫耀の側にいてあげてね？」
わたしには、
それができないから。
廉「ごめん。」
廉くんが何故か謝罪をする。
廉「俺、勝手に勘違いして、
ひどいこと言った。
お前をめちゃくちゃ傷つけた。
ほんまに、ごめん。」
勘違い？
そんなの廉くんはしてないよ。
わたしが紫耀を縛ってたのは本当だし
紫耀が他に好きな子がいるってのも事実。
手に垂れた雫が
目に涙が溢れていることを私に伝える。
これからは強くならなきゃいけないのに。
紫耀がいない人生を
生きていかなきゃいけないのに。
突然、
暖かさに包まれる。
廉くんが私を抱きしめた。
廉「気がすむまで泣いてええよ。
俺の胸貸したるわ。
我慢するのはよくないで。」
そんな優しい廉くんの腕の中、
彼の暖かさを感じながら
思い切り泣いた。
この涙と一緒に、
紫耀への想いも流れていきますように
そう願いを込めて。
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作者名：Kipi
| 作成日時：2019年1月7日 9時
