【歌い手】本当の私は仮面の下

第39話　過去編16 ページ42

Aside









『さっむ…ヤバいマジ風邪引くわ、これ』





もう絞れるくらいびちょびちょの制服を玄関で脱いで部屋着に着替える



明日…行かないと本当に辞めさせられそう…









分からないけど、リスナーのみんなとかに迷惑がかかるなら自分が犠牲になった方がいいかなと思った



……私、何考えてるんだろう…ただ歌が歌いたいだけなのに









『……なんか、馬鹿馬鹿しいな』







普段リビングなんて入らないから何か新鮮だ



ちょっと前までまだ温もりがあったのに今では新居のような冷たさがある



私も家もみんな変わってしまったんだなぁ、と思う





何だろう、心にぽっかり穴が空いた感じ



漫画とかで何なんだよそれ、と思っていたがなんか分かる気がする





何も考えれなくてよく分からないこの感じ、虚しさだけが残るこの感じ



久しく人の温もりに触れていないからか、とふと思った



外に出れば人の悪をみてしまったから余計に感じてしまう









お母さんたち、何しているんだろう



元気かな、笑っているかな



私の知らないところで笑っているのかな



私がこんなことになってるだなんて、知らないよなぁ…





家族がいなければ親戚もいない



友達はいるが本当のことが言えない



歌は歌えるがいじめられる



歌が歌えないがいじめられない





もう、分からない



私はどうしたら正解だったんだろう



正しい道なんて分からない



歌が歌いたい、また誰かの生きる意味になりたい









誰か、ここに来て





ぎゅって抱きしめて





頑張らなくていいんだよって言って





よく頑張ったねって言って





誰でもいいよ、私は生きているって





ここに生きているって





私の“存在”を認めて





否定しないで、肯定して、受け入れて





“誰か”じゃ嫌だ、“私”だ





きれいごとなしで





本当のことを言っていいなら









＿＿＿助けて、ほしい









人の温かい心に触れたい







・









『まふくんっ…あ…まつき…っ…』





薄れる意識の中で人影が見えた

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