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『珍しいですね、中堂さんが熱心にテレビを見るなんて』
中堂さんは相変わらずソファーに座ったままテレビを見ていた。六郎はついさっき出勤してきたミコトと夕子に連れられて解剖に行ってしまった。もうオフィスには私と中堂さんしかいない。坂本さんは今日はお休みだ。
「俺の解剖結果がねじ曲げられて報道されたら嫌だからな」
とてつもなく中堂さんらしい意見に、心の中で「ごもっともです」と呟く。ふとテレビから視線を外した中堂さんが、何かを言いたそうに口を開く。しかし言葉が中々出てこないようだった。
「…この前、4機捜の奴がお前の所に行っただろ」
『あ、はい。来ましたね。中堂さんが取り次いだ事に驚きですけど』
「その、あれだ…何とも無かったか」
中堂さんから出た言葉に自分の耳を疑う。「何とも無かったか」?この人はもしかして人の心配をしているのだろうか。中堂さんに限ってそんな事ある筈ないが、もしかしたら少しは改心したのかもしれない。
『…心配してます?』
中堂さんはそれっきり何も言わずにテレビを見ていた。私が何を問いかけてもだんまりだ。多分、多分だけど心配してくれていたんだろう。もしかしたらそのまま任意で引っ張られるとでも思って。
『何とも無かったですよ、ありがとうございました』
そういうと中堂さんは呆れたようにため息をついて「とことん能天気な奴だな」と眉間にシワを寄せた。そのまま立ち上がって私のデスクにバンと手をつく。かなり音がでかい。
「もし任意で引っ張られてたらどうするつもりだった?何日間も取り調べ室に缶詰で、自白を強要されたら?」
『それは…』
確かにその状態だったらやってない事もやったと言ってしまうかもしれない。そうして私が逮捕されてしまえばUDIの存続は危うい所では無く、確実に白紙になる。この人は飛躍しすぎた例え話をするタイプじゃない。そういば中堂さんも糀谷さんの件で同じような目に遭っていた筈だ
「……誰でも信用してベラベラ喋るのは辞めろ」
『警察にそんな事したら逆に怪しまれるんじゃ……』
「警察も疑え、刈谷みたいな奴だったらどうすんだ」
中堂さんと刈谷さんの相性は想像以上似悪かったようで、最悪だと思っていた毛利さんよりも悪い。でも、志摩さんと伊吹さん達は信用出来ると思うし、その上司である桔梗さんもナイトクローラーチャンネル通りの人だとは思いたくない。
『志摩さんと伊吹さん達は、信用出来ると思ってますから』
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ライ(プロフ) - 続きが楽しみです! (2020年9月8日 20時) (レス) id: 2c7b02683e (このIDを非表示/違反報告)
くえん(プロフ) - ゆっこさん» ありがとうございます、訂正しました! (2020年8月31日 18時) (レス) id: d23d88cca8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - 18の6行目あたりの言ってしまった、は行ってしまったではないでしょうか? (2020年8月31日 0時) (レス) id: 354b579e15 (このIDを非表示/違反報告)
くえん(プロフ) - あさん» 陣馬さん素敵ですよね!推しが同じ仲間に出会えて嬉しいです(*´ω`*) (2020年8月30日 13時) (レス) id: d23d88cca8 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - わたしも陣馬さん推しです! (2020年8月24日 11時) (レス) id: 76a9d40a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くえん | 作成日時:2020年8月15日 22時