シトロン (ページ17)

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「Aさん、Aさん大変ですよ！」

UDIへいつも通り出勤すると、六郎が私を見るなりスマホ片手に飛びついてきた。珍しく中堂さんですらテレビの前で何かを見ている。ミコトと夕子は未だ来ていないようだったが、所長室に荷物があるので所長は来ているらしい。

『この人、前にテレビで…』

「そうなんですよ、第4機動捜査隊？設立の会見で話題になった人なんですけど」

第4機動捜査隊といえば志摩さんと伊吹さんが所属している所だ。そこの隊長でたしか名前が、桔梗さん？珍しい綺麗な苗字で印象に残っている。前に指が三本無いご遺体の解剖をした時、書面上でやり取りした事があったはずだ。

『でもこの人がどうして？』

「それが、この前中堂班が解剖したご遺体あるじゃないですか」

六郎が興奮気味に続ける。彼のへっぽこ探偵ぶりは健在だ。早口で捲し立ててきたので詳しくは理解できなかったが、つまりは警察が証拠隠滅のため、六郎風に言うと「警察の陰謀」で警察車両ごと爆破されたんじゃないか。という事だった。そんな馬鹿げた事あるのだろうか。

『陰謀って大袈裟な』

そう言って笑うと六郎は驚いたような表情で「笑ってますけど、ちゃんと証拠があるんですよ」と言い、新たにサイトのページを開いた。
そのページを「ほら、見てくださいよ」と私の目の前に押し付ける。

『ナイトクローラーチャンネル？』

「はい、今話題のナウチューバーで爆破の瞬間も捉えてるんですよ」

そう言って再生された動画には確かに爆破の瞬間が写っていた。しかし私にはそんな事よりもも「緑の車」と「男」に見覚えがありすぎた。

『メロンパン号と…伊吹さん？』

「…知り合いですか？」

『知り合いも何も……』

正直胡散臭さが溢れすぎて、全く信用に値しない情報だと思った。そもそもなんだ「特派員REC」って。そんな事を考えていた時、六郎がいつの間にかナイトクローラーチャンネルのページを閉じて、先程の桔梗さんの映像を見ていた。

「アクセスが集中してるのに404エラーってどういう事ですかね？」

『404？503じゃなくて？』

「そのはずなんですけど、404が表示されたって…やっぱり陰謀？証拠隠滅のためにページを削除したんですかね？！」

『別に404が表示された時は必ずページが削除されているって訳じゃないでしょ、多分…』

「まぁ、確かにファイルが無い時とかリダイレクトに失敗した時もこうなりますけど…」

六郎が画面を見ながらそう言った。