シトロン (ページ15)

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無理だろうな、中堂さんが解剖したのなら。あの人は少しでも矛盾があるなら絶対に見過ごさないはずだ。

「あの人本当にさぁ……もうあそこまで来ると仕事熱心ていうより執念深さすら感じますからね」

毛利さんが今までの事を思い返すようにそう呟く。今まで中堂さんに毒を吐かれ続けているんだから無理もない。向島さんは「そうですよ」と激しく頷き同意した。

「中堂さんって多駒さんに電話をかけてくれた人ですよね？」

志摩さんがそう尋ねると、毛利さんが「電話をかけてくれたんですか！？あの人が？？」と驚いた素振りを見せる。これに関しては毛利さんに全面的に同意である。私も中堂さんが電話を取り次いだ事に驚きだった。あの人なら精々したとしても電話番号を書いた紙を寄越すぐらいだと思っていたのに。

『志摩さん多分なんですけど』

「なんですか？」

『中堂さんに気に入られてますよ』

それを聞いた途端に毛利さんが「あの人に気に入るとかいう感情あったんだ」と呟いた。向島さんに至っては「毛利さんが気に入られなくて志摩さんが気に入られる理由わかる気がしますね」と言ってしまっている。

「でもめんどくせぇなって言われましたけど…」

「いや、俺だったら電話取り次いでくれないですからね？」

向島さんが笑いながら「まあ毛利さんはね……」と言うと伊吹さんが「毛利さん可哀想〜」と茶化す。というかこの人達はさっきから喋ってばっかりで、一体何をしに来たのだろうか。刑事らしい事をしてたのは開始5分ぐらいじゃないか。

『皆さん今日は何しに来たんですか？』

その問いに志摩さんが思い出したように胸元のポケットを漁る。そして1枚の写真を取り出した。

「この方に見覚えは？」

『あります』

「ですよね。面識はありますか？」

『ありません』

志摩さんが取り出した写真にはかつて大学の同級生だった女の子が映っていた。小柄で可愛い子だったはずだ。確か薬剤学を専攻していた気がした。彼女のことは座学で何度か見かけたぐらいしか知らないが、ミスコンや大学の催し物には進んで出てくるタイプだったので学内の有名人だったと記憶している。

『その子がどうかしたんですか？』

毛利さんと伊吹さんが「言ってもいいのか」とでも言うように顔を見合った後、志摩さんが「実は」と切り出して話を繋げた。