不眠 ページ29
丈一郎side
「ｼｭｺｰｯ...じょ、く.....ｼｭｺｰｯ」
「...ん、吸引な？」
朝、浅い眠りの中で大橋の苦しそうな声が聞こえて目を覚ます。
俺自身も一晩中大橋の様子を見てる時は十分に睡眠をとれへんことが多いから、半分寝ぼけ眼で吸引の管を用意して大橋のカニューレに差し込む。
痰や唾が吸引されてく生々しい音を聞きながら徐々に自分の頭も冴えてきて、ある程度吸引が終わった様子を見て大橋から管を抜く。
「どう？まだ苦しい？」
「ｼｭｺｰｯ...だいじょぶ、ｼｭｺｰｯ」
さっきに比べると苦しそうな表情は和らいでいて、規則正しい呼吸音が聞こえることに安堵する。
「ついでやから今熱も測ろか」
「ん...ｼｭｺｰｯ」
昨日から微熱の続いてる大橋。
夜中に何度か体温を測ったけど、どれも上がらず下がらずな微妙な温度を示していたから、再度脇に体温計を差し込む。
「今は？怠かったり苦しかったりせえへん？」
「平気...ｼｭｺｰｯ」
さっきからいつもよりもゆっくりな大橋の返答に、寝起きやからなのか体調が優れへんからなのか分からんくて、とりあえず体温計が鳴るのを待つ。
時計を見やると、既に俺がホールに行ってもいい頃合いの時間で、大橋を車椅子に移す準備を始めておく。
ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ...
無機質な体温計の音が部屋に響いて、大橋の脇から体温計を取り出すと36.8℃と表示されとる。
「何度...？ｼｭｺｰｯ」
「36.8℃やね。ちょっと辛いんとちゃう？」
「んーん...ｼｭｺｰｯ、だいじょぶ...ｼｭｺｰｯ」
普段大橋の平熱は36℃台前半やから、少しだけ怠さや不調はあるかもしれへんけど、すぐに我慢する性格の大橋やからちょっとの事では相談せえへん。
「...そっか、辛くなったら言うてな？車椅子乗れそう？」
「ん、いける...ｼｭｺｰｯ」
やっぱり話し方は少しゆっくり目やから、身体は正直で少し怠いんやろうな、と想像する。
用意しておいた車椅子を大橋のベッド近づけて、お姫様抱っこをして車椅子に乗せて足元にブランケットを掛ける。
「ｼｭｺｰｯ、ありがと...」
些細な事でもちゃんとお礼を言ってくれるのが大橋で、どれだけ自分が体調悪くても人に対して感謝の気持ちを表してくれるのはこっちも嬉しくなる。
大橋の車椅子を押してホールに入ると案の定まだ誰も起きてへんくて、とりあえずテーブルに大橋の車椅子を停めて朝食を作ろうとキッチンに向かった。
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ゆん(プロフ) - 佑妃奈さん» はじめまして！嬉しいコメントありがとうございます...！今後ともぜひよろしくお願い致します！＾＾ (4月16日 3時) (
レス) id: 03ea4d57a5 (このIDを非表示/違反報告)
佑妃奈(プロフ) - 飽きてませんよ!!恭平のお話好きです！ (4月14日 16時) (レス) id: 560bd373a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆん | 作成日時：2024年3月22日 1時
