◆*Unhappy Wedding*◆【K.Ninomiya】Part5 (ページ5)

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「…、着いた」

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受け付けの人から教えてもらったルートを進み、

難無く辿り着いた一室の入口前。

いかにも大企業の会議室を象徴する

分厚く威厳のある木版が

庶民の私の心に変な緊張感を生み出す…

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「…さっさと終わらせよ」

そして、一刻も早く翔ちゃんの元へ向かうんだ。

彼に隠してた事、一つ残らず話す為にー……

フゥ、と深呼吸をして

銀製のドアのぶを右に回す。

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ｶﾞﾁｬ
「、カズ、入るよ…」

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私の呼び声に動じる様子もなく

カタカタ、とひたすらパソコンのキーボードを打つ

丸まった小さな人影。

その眼差しは真剣そのもので

仕事用に掛けたメガネのレンズ奥から

彼独特の集中力が肌で感じられる。

私は悔しくも、見惚れた。

カズって、こんな表情(かお)も出来たっけ…？

こんな……

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和「ノック」

「っ？！」

和「入る前、してなかっただろ」

「、あ…」

和「もしや…働くオトコの俺から目が離せなくて忘れた？」

「ち、違う！！ただ…その、相変わらず猫背、骨盤治しに骨折院へ行くべきだと思ってただけっ」

和「おま…」

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"まあ最近、異常に腰は痛いけど…病院に行くほど俺は暇じゃないんで"

忙しさって罪ー、そう冗談っぽく言うカズは

私に左の手のひらをさりげなく差し出す。

…ああ、そうだった。

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「…はい」

和「どーも。コレがないと話がラチ行かなくて」

「…次はもう持ってこないからね」

和「何で？」

「何でって…」

和「俺より大事な用事なんてあんの？」

「、それは」

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カズの指先が優しく、私の黒髪を摘まむ。

彼の眼球が窓枠に差し込む日光に反射し、茶色に色を変える。

胸が苦しい。息が出来ない。

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和「…A」

「…っ…」

和「…」

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ダメ。

これ以上、名前を呼ばれたら。

見つめられたらダメ。

このままだと私…

……私ーー……………

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ｺﾝｺﾝ、

＊「失礼致します。ケータリングの準備を行いに来ました…」

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時間が、止まった。

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＊「……A…？」

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「……翔、ちゃん…」

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絶え間なく刻まれていた"平穏な毎日"の針が

呆気なく……止まってしまった。

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