飛び込んで愛の世界へ

１９ 向井side ページ19

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向井side




うっすらと聞こえた話し声で目が覚めた。

身体を起こしてみると、キッチンのほうに人影が見える。


Aちゃん…？



ボーッとしながらドアノブに手をかけると


「照、待ってそれは…」


ただならない彼女の声が聞こえて、一気に我に返った。





向「今の…照くん？」


そっと扉を開けると、俺の声に少し驚いたAちゃんは

コクンと頷く。



会話の内容が聞こえたわけやないけど

良い話じゃないって事ぐらい、俺にだってわかる。




「…康二くん、もう平気？

おかゆ作ったんだけど…
向「Aちゃん…今日はもう帰り」


俺の一言に彼女の動きが止まる。




「…どして？別に悪いことしてるわけじゃないんだし」

向「だって…」




口では強がってても

潤んでる瞳は隠せていない。




そしてこれ以上ここにいても君はきっと

俺に弱みを見せることはない。



でも感情を押し殺したままの君に

気づかないをフリするなんて俺にはできない。





向「俺もう大丈夫やから、ホンマありがとう」




彼女を玄関まで見送って

まだ温かいおかゆをありがたくいただく。






もしあのまま


彼女の涙が一滴でも溢れていたら




弱みを見せて

助けを求めてくれていたら



俺は彼女を抱きしめてたんやろか。





向「…うま…」




でもそんな資格なんかないって

自分が一番わかってんねん。

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