光の中の翼 ページ31
時計の針は午後11時を指している。
リビングには和也と潤が向かい合ってビールを飲んでいた。
「あの２人は本当に仲がいいですね」
「やきもちか？」
潤のその言葉に和也は不機嫌そうにビールをテーブルに置くと、２階の方を見つめる。
２階からは何の音もなく、そこには静かな階段が存在するだけだった。
智の部屋では雅紀がスツールに座って、ただ智の背中を見ている。
小さな背中が微かに動き、熱心に絵を書いてるのがわかった。
「雅ちゃん、さっきからそこで何してるの？」
やっと出てきた智の言葉は、淡々としているが優しい響きを持っている。
「智くんの背中を見てる」
そう言った雅紀はクスリと笑って楽しそうだった。
「オイラの背中見たってつまらないでしょ？」
「そんな事ないよ、絵を描いてる時の智くんの雰囲気好きだもん……なんかそこに癒しがあるよね」
雅紀の舌たらずの優しい声が響いて、動いていた智の背中が止まり、雅紀の方に振り向く。
「……決めたんだ」
一言そう言った智の瞳は、真っ直ぐ先の未来を見てる力強さがあった。
「そっか……うん……智くんがそう決めたならいいんじゃない、俺の事が原因って事はないよね？」
「……う…ん……少しは関係あるかな、って言ってもそれだけで決めてはいないよ、誘われた出版者は海外でも注目されてる大手だし、いずれはね海外進出って考えたら、ワクワクしちゃってさ」
「へえ、智くんてそんな野心家だったっけ？」
雅紀は目の前の智を見て、少し淋しそうな顔をしている。
そんな雅紀に気づいたのか、智は立ち上がって雅紀の前まで来ると、優しく頭を撫でた。
「野心ってのはちょっと違うかもな、それを想像すると楽しいって思える自分がいるんだ、だからさ、この作品が一番最後の作品になるかな」
智はそう言って、机の方を見る、雅紀もそれにつられるように立ち上がって机の上の絵を見て、驚いたような表情を浮かべる。
そこには羽を飛び散らされた翼が、光に向かって飛んでいく様が描かれていた。
「光に向かって旅立つんだよ、未来を信じてね」
智のその言葉を背中で聞きながら、雅紀は絵を見て微笑んだ。
「個展を見に来てくれた人たちの未来に、光がありますように……か」
雅紀はそう呟く。
「オイラ達、作り手にもね」
智のその言葉に雅紀は振り返った。
「ね？」
「……そうだね」
雅紀はそう言う、そして弱々しく微笑んだ。
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海月(プロフ) - 和春さん、そ言っていただけるとうれしいです。新作が出来たらまたよろしくです (2012年12月23日 23時) (
レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - ａｏｉさん、最後まで読んでくださってありがとう。また新作でもよろしくです。 (2012年12月23日 23時) (レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - 大好きな風山家、終わってしまうのは悲しいですが新作も楽しみにしてますね！ (2012年12月17日 21時) (レス) id: bbbec70c02 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - ナミさん、ありがとうございます。そう言っていただけると書く意欲がわきますよ。新作が出来たらまたよろしくお願いします (2012年12月17日 15時) (レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - お疲れ様でした！！！素晴らしい小説ありがとうございます！！！大好きです>///<新作も楽しみにします>_<本当にありがとうございました！！！ (2012年12月17日 14時) (レス) id: a2fedde7a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海月
| 作成日時：2012年10月15日 19時
