弾む声の理由 ページ30
「ねえ、ま〜くん、最近、智くん、部屋に篭りがちだけど、そんなに忙しいの？」
確かに和也の言うとおり、雅紀と菅原の一件があってから、智はあまり兄弟と顔を合わせなくなっていた。
雅紀もそれは気なってはいたが、こういう時は理由を聞かないほうがいいというのが、風山家の暗黙のルールみたいになっている。
「う〜ん、なんかね……他の出版社からも誘われているらしくて、その事が関係あるのかな」
雅紀はそう言うと、テーブルのコーヒーを飲みながら呟くように言った。
そんな和也と雅紀の会話をキッチンで聞きながら、潤はグラタンを作っていた。
チーズを載せ電子レンジの中へ入れスイッチを押す。
潤は小さい声で「よし」と呟くと、鍋つかみを外してリビングに向かった。
「今日は何？」
雅紀の言葉に潤は何かいい事でもあったのか、珍しくニコニコと笑う。
「グ・ラ・タ・ン」
潤の弾んだ声に、雅紀と和也は顔を見合わせ、不思議そうな顔をしていた。
そんな２人の前に潤が雑誌を差し出す。
「見ろって事だよね？」
雅紀はそう言って、表紙を見ると、建築関係の専門誌、そして風山潤の文字を見つけ、慌てたようにページを捲っていくと、そこに最優秀作品の文字と、潤の名前があった。
「これって、潤が設計したビルだよね……凄いじゃん！」
潤が機嫌が良かったのは、これが理由だったのだと２人は思った。
「だけど、うちの家系ってホント凄い人が揃ってますよね〜……智くんが絵の才能、潤くんはこうやって賞を貰うし、ま〜くんだって認められてる、翔くんは名外科医だし、僕だけ何も才能がない」
「才能がないって……お前はその才能を面倒くさいって放棄してるじゃねえか」
和也の言葉に、潤はそう言い、雅紀はそれを聞いて苦笑いを浮べている。
「あれ、ばれてました？」
「まあ確かに、そういうのって、妬まれたり、利用されたり、世の中は色々面倒な事もあるからな」
潤は和也の皮肉に対してそう言うと雅紀の左手の傷痕を見た。
「ま〜くん、気をつけてくださいね、貴方、馬鹿なんですから」
和也の毒舌に含まれた優しさに、雅紀は左手を後ろに隠してしまう。
包帯はとうに取れていたが、傷は残っていた。
「馬鹿馬鹿言うな…よ」
そう言いながら、雅紀の頬が膨れている。
何も言わなくても、兄弟にはどうしてそうなったのか、なんとなくわかっていたのかもしれない、此処にはいないが、もちろん翔にもだ。
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海月(プロフ) - 和春さん、そ言っていただけるとうれしいです。新作が出来たらまたよろしくです (2012年12月23日 23時) (
レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - ａｏｉさん、最後まで読んでくださってありがとう。また新作でもよろしくです。 (2012年12月23日 23時) (レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - 大好きな風山家、終わってしまうのは悲しいですが新作も楽しみにしてますね！ (2012年12月17日 21時) (レス) id: bbbec70c02 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - ナミさん、ありがとうございます。そう言っていただけると書く意欲がわきますよ。新作が出来たらまたよろしくお願いします (2012年12月17日 15時) (レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - お疲れ様でした！！！素晴らしい小説ありがとうございます！！！大好きです>///<新作も楽しみにします>_<本当にありがとうございました！！！ (2012年12月17日 14時) (レス) id: a2fedde7a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海月
| 作成日時：2012年10月15日 19時
