大人は嘘つき ページ12
咲也は仏頂面で雅紀の顔を覗き込む。
「……ああ、この間のオジサン」
「オ、オジサン…ね」
「ねえ、なんで大人って嘘つきなわけ？教えてよオジサン」
咲也はそう言いながら、卑屈に笑った。
子供らしさが無いと言うか、いや逆にここまで捻くれていると子供っぽいのかもしれない。
「嘘つき……例えばどんな嘘？」
雅紀は黒目がちの瞳を大きく開いて咲也を見る。
「去年はクリスマスには退院できるって、だから頑張ろうねって、でもクリスマスもお正月も病院だった、俺、頑張ったのに……なのに、なんで！？」
咲也は今にも泣きそうな声でそう言った。
大人は子供を頑張らせるために、時として嘘をついたりする。
だがいくら頑張ってもどうにもならない現実もある。
ここで子供騙しの安っぽい言葉を口にした所で、この子には通用しないだろう、それは雅紀にもわかっていた。
「実はさ俺も嘘つきなの」
雅紀の言葉に、咲也は一瞬驚いた顔をして、すぐにまた仏頂面に戻る。
「……何だよそれ、ばっかじゃねえの、そう言えば俺が言う事聞くっておもってんの？」
「俺もね、いつも家族の言う事きけなくて、しょっちゅう怒られる、こんな大人になってもそうなんだもん、まだまだ小さい子供にはそれは無理だよね？」
「はあ？入院ばっかしてると思って馬鹿にしてる？」
「入院ばっか……ね……その言葉、突き刺さるわ……なんか自分に言われているみたい」
「オジサンはもう退院なんだろ？そんなヤツに俺の気持ちなんかわかるわけない」
咲也の言葉を聞き、なんてこの子は饒舌なんだろうと雅紀は思った。
きっと、周りの大人達の言葉を常に聞きいているのだろう。
その言葉の何処かに救いを求め探しているのかもしれない、自分の中の不安を消すための手段。
「退院だけど、１週間毎の通院が条件なんだ……俺の体、他の大人の人とちょっと違うからね…どっちかっていうと咲也の体に近いかな」
「へ！？」
雅紀の言葉に咲也は短い声を上げる。
もう７才にもなる、何度も入退院を繰り返していれば、病院の中に色々な人間がいることぐらいわかっているだろう。
自分の言った言葉が軽はずみだった事に気づいたのかもしれない。
「咲也はいい子だね……人の痛みがわかるんだ」
雅紀はそう言って悲しく笑うと、咲也の頭をクシャクシャと撫でた。
「子供あつかいするな！」
咲也の大きな声がロビーに響き、母親が慌てて走ってくる。
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海月(プロフ) - 和春さん、そ言っていただけるとうれしいです。新作が出来たらまたよろしくです (2012年12月23日 23時) (
レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - ａｏｉさん、最後まで読んでくださってありがとう。また新作でもよろしくです。 (2012年12月23日 23時) (レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - 大好きな風山家、終わってしまうのは悲しいですが新作も楽しみにしてますね！ (2012年12月17日 21時) (レス) id: bbbec70c02 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - ナミさん、ありがとうございます。そう言っていただけると書く意欲がわきますよ。新作が出来たらまたよろしくお願いします (2012年12月17日 15時) (レス) id: 8fd3529656 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - お疲れ様でした！！！素晴らしい小説ありがとうございます！！！大好きです>///<新作も楽しみにします>_<本当にありがとうございました！！！ (2012年12月17日 14時) (レス) id: a2fedde7a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海月
| 作成日時：2012年10月15日 19時
