僕はボクの事が大嫌いだった ページ4
自分に自信が持てない。
一言を発するにもかなりの勇気が必要だった。
母と洋服を買いに行った時の事だ。
僕は小学校の高学年くらいだったと思う……。
店員さんに2種類の洋服を進められた。
そして次の母の一言がボクの選択を決める。
「こっちの方がいいんじゃない？」
母が指をさしたのはボクが欲しいと思う方じゃなった、でもボクは「うん」と言ってしまう。
値段がそっちの方が安いからと気を使ったわけではない、ただ言えなかった、理由なんてわからない。
ボクは「こっちがいい」という簡単な言葉さえ出すことができなかった。
家に帰ってきて頭の中で、あっちの方がよかったなあと考えたりもしたが、母にはとうとう言う事ができなかった。
そこは素直に言っても怒られることはなかったと思う、でも、言えない臆病な自分がそこにいて、そんな臆病な自分の存在は、今、影は薄くなったものの大人になってまでも付きまとっている
物心ついてから十数年は、自分の事が大嫌いだった。
本当に自分一人では何を言うのもやる事もできなかった。
ボクの小学校のあゆみ、いわゆる通知表だが、最高は３重丸、なのでオール３が最高点だった。
一度だけこんなボクにもそのチャンスがあった、でも取れるわけがなかったんだ……
国語に『話す』という項目があったから……。
６年間、この項目だけは一度も３重丸を取ったことがなかった。
かわった子だと思われるかもしれないが、ボクはテストが好きだった。
それは成績が良かったからという理由ではない、テストなら授業中に先生にあてられる事がないからだ。
自発的に話す、人と会話する、人前で声を出すという行為自体、苦痛……いや恐怖に近い感情があったのかもしれない。
そんなボクに父から厳しい試練が言い渡される。
お客さん、まあ仕事の同僚の前で歌を歌えというのだ、人前で歌うという事よりも父に怒られるのが怖くて、嫌々人前で歌ったりもした。
これは完璧、親のエゴだと思う。
小さい子が歌えば、誰もが褒める……。
父はそれを見て優越感に浸った笑顔を浮かべていたものだ。
人前で歌を披露しなきゃいけないと思うだけで、心臓が口から飛び出しそうになる。
そんな状態が中学の２年まで続いた。
ボクの両親は二人ともどちらかというと、力づくで人を思い通りに動かそうとするタイプ。
父と母はよく夫婦ゲンカをしていた。
必ずと言っていいほど、物が壊れる激しいものだった。
両親の存在はボクにとって反面教師になっていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海月(プロフ) - はじめましてグリーンピースさん。感想ありがとうございます。驚くなんて、全然大丈夫ですよ(笑)。楽しみにしてくれているという言葉。とても嬉しく思います。更新が滞ってしまうことも多々あるかと思いますが、これからも立ち寄って下さいませ。よろしくお願いします。 (2019年5月24日 5時) (
レス) id: 8bd65f83d8 (このIDを非表示/違反報告)
グリンピース(プロフ) - 作品を読み進めていくうちに、少し安心しました。勝手ながら共感したりしてました。お話の続き楽しみにしてます。 (2019年5月15日 14時) (レス) id: e649432f4c (このIDを非表示/違反報告)
グリンピース(プロフ) - 私は小さな頃から「◯◯が、したい」ではなく「◯◯で、いい」と言う子どもで母からよく言い方を直されました笑 社会人になりましたが今の自分が「◯◯がしたい」と具体的な欲がなく仕事もその性格が邪魔をして悩んでいます。そんな時にこの作品に出会いました。 (2019年5月15日 14時) (レス) id: e649432f4c (このIDを非表示/違反報告)
グリンピース(プロフ) - 読みました。海月さんの作品も好きで全部読んでいます。陰ながらいつも応援させて頂いてます。今回初めて感想を送ったので、驚かせてしまったら、すみません。 (2019年5月15日 14時) (レス) id: e649432f4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海月
| 作成日時：2018年11月19日 14時
