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とある日、珍しく長引いた残業。
というのも私が大きなミスを冒してしまって。
みんながどんどん帰宅していく中ひとりで居残った私。
亮平に"今日残業になった”とだけ連絡して、残りの仕事に打ち込む。
上司に怒られたし、後輩にも気を使われて情けなかった。
なんとか気合いを入れ直して仕事を終わらせると、もうすっかり遅くなっていて。
『ただいま…』
そう小さく呟いて靴を脱ぐと、パタパタと駆け寄ってくる子犬のような亮平。…いや、大きいから大型犬？
「おかえり！お疲れ様」
いつもと変わらない笑顔を見ると、なんだか安心して力が抜ける。
『玄関まで出迎えてくれるなんて忠犬みたいだね』
思わずそう告げると、
「俺は犬じゃなくて天使だよ？」
と首をこてん。
ああ、癒されるなあ…
自分で自分のことを天使だと表現する成人男性なんて普通はおかしいと思うけど、亮平が言うと違和感がなくて、疲れた頭では否定する気も起きずなんとなく納得する。
そのあと着替えてリビングに戻ると、
「はい、ココア」
ってあったかいココアが入ったお揃いのマグカップを差し出してくれる。
『ありがとう……』
その優しさになんだか涙が零れそうになりつつも、1口飲むととっても優しい味。
「仕事でなにかあった？」
ただ残業しただけじゃないってこと、なんとなくわかったのかな。
『うーん、ちょっと…大きなミスしちゃって』
出来るだけ軽くそういう私に、"そっか”と優しく漏らす。
「そういう日もあるよね」
「お疲れ様。俺、Aが仕事してるとこは見た事ないけど、いつも頑張ってることは知ってるよ？」
そういって頭をポンポン、と撫でてくれるからその優しさに堪えていた涙が溢れちゃって。
「え！泣かないで！…あ、ううん、泣いてもいいよ」
なんだかワタワタし始めた亮平がかわいくて、次はなんだか笑えてくる。
「…あ、そうだ」
何かを閃いた様子で私からマグカップを優しく取って机に置くと、そっと抱きしめられる。
「よしよし」
亮平と一緒に暮らしているけれど、抱きしめられたのは初めてで。
戸惑いつつもその優しさにまた涙がこぼれる。
「今日はゆっくり休もうね」
背中を優しく撫でてくれるから、私もそれに甘えることにした。
『……ありがとう』
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作者名：Noa | 作成日時：2020年8月17日 8時
