あざとい天使。(緑) (ページ12)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:139,041 hit

12 ページ12

家に帰っても亮平は終始無言。

なんだか気まずい空気が流れていて。

「…あの人と付き合うの？」

しばらくしてようやく声を発したと思ったら、やっぱりさっきの出来事の話。

…というか聞こえてたんだ、告白。

『…わかんない』

あのとき、あのまま亮平に声をかけられてなかったら正直OKを出していたと思う。

私もいい歳だし…こんな言い方は良くないけど先輩は正に優良物件というか。優しくてスマートで仕事もできて、彼女になれたら幸せだと思ったから。

だけど返事をしようとした時に頭に浮かんだのは亮平の顔。そういえばついこの間同僚に亮平のことを好きかどうか聞かれたなあ、なんて。

あの時の私は誤魔化したけど、確かに好きという気持ちが芽生え始めていたのは事実。

どうしたらいいのかわからなくて、正直今は迷っている。

「……付き合いたいなら、付き合えばいいと思う」

そんな私を見兼ねて、優しくそう告げられる。

意外だ。ご飯に行くだけであんなに拗ねていたのに、まさかそんな言葉が出てくるとは思ってなかった。…なんて自惚れすぎてたのかな。

「…さすがに彼氏がいる人の家にはいられないから俺とはお別れになるけど」

『…えっ？』

その言葉に思わず聞き返す。そんなこと言ったって、亮平には居場所がないはずだ。

「…知り合いにちょっとアテがあるから大丈夫。…俺のことは気にしなくていいよ」

知り合いって誰のこと？

そういえば1ヶ月も一緒に暮らしていて、亮平のことは知っているようで知らない。私が仕事の間何をしているのかとか、友人はいるのかとか。

たった1ヶ月って、その程度だ。

「…まあいいや。今日は寝よ。また教えて」

それでも"付き合う気は無い”と言えない私はまだ迷っていて。

いつもは寄り添って寝るから狭いベッドも、今日は隙間が空いていてなんだか広く感じた。

その広さは、少し悲しかった。