Jack of all trades (ページ11)

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中村「この事件は、マインドコントロールによるものなんだ。」

そう言った海人の顔は真剣で、どこか辛そうにしていた。

中村「ね、重松が連行されたとき、何て言ってた？」

そう尋ねられ、少し前の記憶を探る。
海人が推理と確実な証拠で重松を追い詰めたあの時。
低い声で殺したのは此奴だと言った海人に向かって重松が放った言葉。

宮近「俺は、殺しはやっていないぞ、」

中村「殺害現場の防犯カメラに写っていたのは、ひとりの女だった。海斗の推理通りだ。」

宮近「つまり殺しをしたのはその女、ってこと？」

中村「そう。」

徐々に頭が混乱してくる。
本当の犯人はその女の筈なのに、海人は何故犯人は重松だと言い張るのだろうか。
そしてその情報を、何故俺は知らないのだろうか。

中村「その女は、今指名手配されてる。女の名前は、」

中村「重松尚子。」

聞いたことの無い名前に再び頭が混乱する。
というか、殺したの、本当に重松明夫じゃないんだ。

宮近「重松尚子って、誰？」

中村「重松明夫の嫁さんだよ、操り人形の、ね。」

それから海人は苦しそうな顔をして、喋らなくなった。
無言のまま、二人でアスファルトの道を歩く。
海人が蹴った石ころが、跳ねて道の脇に転がった。

見慣れた署が、なんだか異質な空間に思えた。

がちゃりと重い音を立てて開く扉の向こう側に、知らない二つの影が並んでいた。
がっしりしていて優しそうな人と、可愛い顔の人。
扉が開くと同時に、彼等は此方を向いた。

？「初めまして、捜査一課の吉澤閑也です。」

？「七五三掛龍也です、」

身長は俺よりも随分高く、その圧に圧倒されながらも頭を下げる。

宮近「宮近海斗です、宜しくお願いします。」

中村「何人見知り発揮してんの？笑」

海人が笑いながらつついてくるが気にしない。
暫くすると、あー疲れた、とか何とか言いながら何時もの部屋に戻って行った。

松田「この二人、海人の元同僚。」

如恵留さんと話している二人をデスクから眺めていると、元太がコソッと教えてくれた。
という事は、海人が俺の知らない情報を持っているのは彼等が協力してくれているからだろうか。
さっき一課に行ったなんて話していたからそうなのだろう。

ぐるぐると自問自答を繰り返し、出てきた答えに納得する。
既にぐちゃぐちゃな頭の中を整理する様に、俺は一冊のノートに事件のこと、海人のこと、その他の疑問や分かったことを雑に書き込んで溜息をついた。