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「不動明王。例の計画は。」
「問題ないっすよ。一週間以内には整えてやります。」
例の計画、とは一流プレイヤーを集めろとの命のことだろう。対雷門イレブンチームの生成。
影山は淡白にもそれの確認だけをして「わかった。もういい。行け。」とおれたちを解放する。
「待て、お前はここに残れ。」
踵を返しかけた背中に影山はそう言った。えっ？と振り返れば影山は明らかに視線をおれに向けている。どうやら"お前"はおれのことを指しているらしい。
同じように足を止めた明王はおれと影山を一度交互にみたあと、「じゃ、俺はこれで。」と部屋から出ていった。
残されたおれは影山の視線に射抜かれたように動けなくなった。
「お前が兎…いや、AA。」
奴がおれの本名を知っているとは思わなかった。明王の前で呼ばれなくてよかった。それとも聞かせないためにわざと明王を追い出してから言ったのか。
「はい。貴方の補佐役をと、あのお方から命を受けまして。」
「そうか。ご苦労だったな。」
影山。その奥の瞳、何を考えているかわからない。
「お前は、もういい。」
「え？」
「サッカーのできない人間はここには必要ない。」
「…用済みってことですか。あのお方がそう言ったんですか。 」
まさかこんなにも早く切り捨てられてしまうとは。その要因はおれがサッカーのできる身体でないだけでなく、不動明王をこちら側に引き入れたことも加えて尚更だったのかもしれない。
「とっとと失せろ。」
最後にそう吐き捨てられて、おれは何も言えずに部屋から出た。何か言うと泣きそうだったから。ぐっと唾を飲み込んで悔しさとか悲しさとかこらえて、荷物とDVDを置いてきたあの部屋に戻った。
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作者名：19 | 作成日時：2021年8月16日 0時
