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みんなが帰った教室にホッチキスの虚しい音な響く。外からは野球部の掛け声が聞こえる。
「 ……はぁ 」
別に、期待はしてなかった。
彼が来るなんて、まぁないやろなとは思ってた。
けど、案外1人ってのはやっぱりキツイ。
プリントの束を見ればやっと半分。
たぶん、これ全校生徒分やと思うねんけど。
時計をみるともう少しで18時を指すところだった。絶対終わらへん、と早く帰りたいななんて思いながら夕日が沈むグラウンドを眺めていたら。
バンッッ、てそりゃあ扉が壊れるくらいの音が聞こえて。びっくりして声も出ないままドアの方に顔を向ける。
「 ……っはぁ、間に合った 」
息を上げながら、そこにいたのは福本くん。
……いや、間に合ってなくない?!今朝とちゃうよ?!
「 まじでごめん!!遅れて…… 」
よく見たら彼は部活着で、汗だくやった。
「 残り、手伝うから。ほんまにごめん 」
息を整えて、私の向かい側に座る彼。
もちろん、何て声をかけていいかも分からない。
「 …………言い訳、してもいい? 」
福本くんが来てたぶん10分も経ってない。
静かな空気を破ったのは彼だった。
「 次の大会でさ、…あ、俺サッカー部やねんけど。選抜メンバー決めるの、今日やってん。……で、試合してたら遅くなりました、……ごめん 」
福本くんが遅れてきた理由なんて、どうでもよかった。別に、来てくれなくても出来たことやし。
「 ……Aさん、俺のことあんま好きくないやろ?……だから、その流れで誤解されるのはちょっと、嫌やったから 」
けど。はぁ、と緊張してたのか肩の力が緩む福本くんを見たら、ちょっと申し訳なくなった。
「 ……それで? 」
「 え? 」
「 選抜メンバー、選ばれたん? 」
「 う、うん……!! 」
ならええんちゃう、上手く言葉が出てこなくてそれしか言えなかったけど。一気に笑顔になる福本くん。
「 ありがとう!! 」
「 ……いや、別に何もしてへんから。手、動かして 」
「 はい! 」
おっし、なんて小さく呟いてニコニコしながらホッチキスを留める福本くん。
普段の姿からは想像できない、
手際のいい彼に少しキュンとした。
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ゆい(プロフ) - こじけんだいすきなんでお願い出来ますか?あと良ければ大谷怜爾くんもかいてほしいです!更新楽しみに待ってます♪ (2017年2月7日 1時) (レス) id: 439000d283 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ。(プロフ) - trskさん» コメントありがとうございます…!また晴太郎くん書かせていただきますね! (2016年12月19日 22時) (レス) id: a957d409db (このIDを非表示/違反報告)
trsk(プロフ) - 私、晴太郎担なんですけどほんと晴太郎の話面白かったです!またまってます!! (2016年12月19日 18時) (レス) id: 43e735b034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ。 | 作成日時:2016年10月29日 23時