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「今更何?」
私は海人を睨んだ
「A、髪切ったんだな…」
私の問いかけを無視して
懐かしそうに顔をほこばらせて言ってきた
「ねえ、聞いてる!?」
「残りのお金返済してきた」
「…え?」
「借用書も返してもらった」
耳を疑った
「もう…大丈夫だから」
「…大丈夫ってなに?」
「……」
「ねぇ…私がどんな思いして来たか知ってる?!」
「許されないってわかってる…けど」
「罪償いたい。もう一度…やり直したい」
海人がこれでもかってぐらい頭を下げてきた
「自分勝手な事ばっか言わないでよ!!」
「……」
「海人がいなくなったあの日に
もう…関係は終わったんだよ」
海人の前を横切って
立ち去ろうとすると
「俺ほんとちゃんとするから」
消え入りそうな声で
手を掴まれたと思ったら
後ろから抱きしめられた
「本当にごめん、本当に…本当に……」
大好きな人に
裏切られた
あの日から
人生が変わってしまった
なのに
懐かしい海人の匂い
懐かしい大きな身体に
抱きしめられて
懐かしい記憶も頭に過ぎってしまう
《俺一生大事にするから》
ねえなんで
なんで今更現れるの
頭の中は海斗がいるのに
.
抱きしめられた
この震えてるこの手を
今にも消えてしまいそうな彼を
すぐに振り払えない私がいた
.
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作者名:いろは | 作成日時:2021年2月21日 13時