花火ひらく

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夏休みだったし、部活も引退していたから、受験勉強をするのみというのは分かっていたけれどどうもする気になれなかった。


わたしは小さい頃に父と母は事故で亡くして、
田舎に住むおばあちゃんに育てられた。
特にそのことで引け目を感じたことはなかった。田舎だったからかもしれないけれど、周りの人はみんな優しかった。

おばあちゃんは特に口うるさく勉強のことを言うわけでもなかったし、友達はみんな受験勉強で会うことができなかったから、私の夏休みはただ1人でダラダラするだけの平凡な1ヶ月になりそう、だった。



でも、勝利が来たことによってわたしの平凡な夏休みは大きく変わっていった。



朝、起きたらどっちかの家に行って、お昼ご飯を食べて、2人でのんびり過ごす。

5時の鐘が鳴って、夜ご飯の時間になったら自分の家に帰る。


たまに外に出て、ただぼんやり並んで歩いた。
2人でいる姿を友達に見られて冷やかされたりもした気がする。

この町にはなかなかいない美少年の勝利はちょっとした騒ぎになった。
勝利は自分の顔にあまり興味がなさそうで、自分の顔目当てにやってくる子に対しては居留守を使っていた。


勝利はわたしに勉強を教えてくれたりもした。勝利はすごく頭がよかった。

わたしの部屋にあった漫画が彼はお気に入りでよく読んでいた。

たまーにギターを弾いてくれた。
これはビートルズのなんとかっていう曲なんだよって熱心に解説してくれたけど結局よく分からなくて、勝利の横顔をただ眺めていた。



どんなことをするわけでもなく、わたしはただ2人でいるのが心地よかった。

きっと、彼も、そう思っていたはず。



色んなことを話したけど、なんで勝利がここにやって来たのかは聞かなかったし、聞けなかった。

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