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「ねえ、両親がボディビルダーって、冗談だと思う？」
今日の夕食は親子丼だった。
タツは本当に料理が上手だ。レパートリーもたくさんあるし、初めて作るものもレシピさえ見れば、ぱぱっと作ってしまう。
生前料理人だったかもしれない、と一瞬思ったけれど、そういうのともまた違う気がする。プロというより、食好きが高じて上達したって感じ。
「ほんとうに両親がボディビルダーのひとっているかな。」
スプーンでつゆだくの海苔付きご飯を掬いながら、そう言うとタツは向かいで眉をひそめた。
「急になんの話？」
「今日、会社のひとが言ってたから。でも、へえすごいですねって言っちゃって、冗談だったら恥ずかしいなって。」
「男のひと？」
「え？」
「そのひと。」
タツはまた片手で頬杖をついて、なにか探るような目つきで私を見る。
「うん。先月本社から移動してきたひと。日なたのひと。」
「日なたのひと？」
「朗らかで、いると周りを明るくするようなまぶしいひとのこと。こっそりそうやって呼んでる。」
どんぶりに視線を落としたまま説明すると、向かいでタツがふっと笑う声がした。
「なんやそれ。Aちゃんて、たまにヘンやな。」
小馬鹿にするような笑みを浮かべるタツを、だけど私は真面目な顔で見る。
タツもたぶん、日なたのひとに近いだろう。幽霊なのになんかきらきらしてるし。
毎日一緒にいても、私はタツの端正な顔立ちに慣れることがない。すーっと通った鼻筋や、長くて涼しげなまつ毛。ちょっと泣きたくなるくらいきれいだ。
「そういえば、もうすぐAちゃん誕生日やん。何食べたい？好きなもん作ったげるわ。」
タツは意気揚々とした顔で私を見る。私はふたたび視線をゆっくりどんぶりに戻した。
「いいよ。そんな特別なことしないで、いつもと一緒で。」
スプーンの先でたまごをつつきながらそう言って、なんだか、心臓がひゅっとつめたくなった気がした。
「はー、そういう盛り下がること言わんといてよ。かわいないなあ。」
向かいで子どものように文句を言うタツの声を聞きながら、さっきまで考えていたことを思い返す。
大切なものって、あるとさびしくなるだけだ。
タツには早く、成仏してもらわなくちゃ。
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蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、お久しぶりです…！早速コメントくださりありがとうございます。かなり前のお話をまだ読み返していただけてうれしいです…(T . T)少しずつの更新にはなりますがお付き合いいただけると幸いです！ (2022年11月20日 18時) (
レス) id: a5f8e6e331 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - お久しぶりです。数日前に満月の夜は〜を読み返したばかりです(^^)また蒼夢見子さんの新作読めるの嬉しいです♪続きも楽しみにしてます。 (2022年11月20日 6時) (レス) id: 9548b7921c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2022年11月20日 0時
