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振り返ると、丸山さんが立っていた。
丸山さんは、先月末本社からうちの営業所に異動してきたひとで、年齢は私と同じくらいに見えるけど役職は課長だ。栗色の髪の毛で、すらりと背は高く、関西弁をしゃべる。
仕事上まだあまり関りがないしほとんど話したこともなくてそれくらいしか知らないけれど、明るくて気さくですでに周りと馴染んでいるように思えた。
日なたのひと。
私は心の中で丸山さんのことを勝手にそう呼んでいる。
学校だったらクラスにひとりはいる人気者。
日なたのひとはニックネームというより、どちらかというと分類名だ。丸山さんは、この世界にはたくさんいる日なたのひとのひとりだと思う。
丸山さんはさっと私の前に立ち、さっとボトルを持ち上げる。持ち上げるとき、ちいさくヨッと声を漏らすのが聞こえた。
「すみません。ありがとうございます。」
丸山さんがボトルを交換している傍らでなんとなく手持ち無沙汰で、こういうとき、気の利く雑談でもできればいいなと思う。でも柄にもなくしゃべろうとするとたいてい失敗するのだ。
「いえ、こちらこそ。この間も替えてくれてはったし。」
「え？」
「あ、いや、俺の席から給湯室の入り口がよう見えて…この間は手伝おう思って間に合わへんかったから。」
今日は間に合ってよかったあ、とやさしげに笑う丸山さんに私は顔が熱くなった気がした。
さっき考えてたことがバレてたらどうしよう。そんなことはあるはずがないけれど、これくらいのことで褒められたいなんて思っていたことがひどく恥ずかしく思えた。
同時に、すこし満足したような、おかしな気持ちにもなった。
「うちの両親、ボディビルダーなんですよ。」
交換を終えた丸山さんは、それから私の方に向き直ってそう言った。
「へえ…ボディビルダー…すごいですね。」
突然なんの話だろう、とぼんやりしたまま返事をする。ボディビルダー。それがどんなものかはっきりとはわからないけど、体を鍛えている強靭そうなひとたちを思い浮かべる。
だけど丸山さんはたのしそうにすこし笑って、
「やから、力仕事とか得意なんです。手が必要やったらいつでも呼んでください。」
じゃあ、と給湯室から去っていった。
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蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、お久しぶりです…！早速コメントくださりありがとうございます。かなり前のお話をまだ読み返していただけてうれしいです…(T . T)少しずつの更新にはなりますがお付き合いいただけると幸いです！ (2022年11月20日 18時) (
レス) id: a5f8e6e331 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - お久しぶりです。数日前に満月の夜は〜を読み返したばかりです(^^)また蒼夢見子さんの新作読めるの嬉しいです♪続きも楽しみにしてます。 (2022年11月20日 6時) (レス) id: 9548b7921c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2022年11月20日 0時
