「やさしくて淋しい」 ページ18
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誕生日の朝早く。はっと息を飲みながら目を覚ました。
そのまま布団の中でしばらくじっと目を見張る。部屋の中はぼんやりと薄暗くて、空気はつめたいのにひたいに汗をかいているような気がした。ばく、ばく、と心臓が音を立てて波紋のように体全体に広がっていく感じ。
あまりよくない夢を見たようだった。
だけど、一度目を覚ましてしまうとそれがどんな夢だったかちっとも覚えていなくて、かなしいような怖いような、そんな漠然とした感情だけを頼りに思い出そうとしてみても、頭の中はもやもやと霧がかってなにも思い出せない。
誕生日なのに。
そんな風に思いながらそっと布団から抜け出して、でも誕生日は自分の中でお気に入りの日どころか、土曜日とかぶった国民の祝日の次くらいに好きではない日になっていたことを思い出す。
「え、まだ3時半やで。」
居間ではタツがソファに座ってテレビを見ていた。
驚いたように眉毛をすこし上げて、それから、あ、お誕生日おめでとう、とやさしい顔をして言うから私はのどの奥がちょっと熱くなる。
「誕生日だから、早起きしたほうが一日長くてお得だと思って。」
そんな思ってもないことを言って、私はタツのとなりに腰を下ろす。テレビの中では、タレントが最新のロボット掃除機の値段を発表していた。
「この掃除機、すごいねんで。」
「そうなの？」
「家の間取りをさ、搭載されてるAlが記憶すんねんて。」
「へえ。」
今いろいろすごいよな、とテレビに視線を向けながらつぶやくタツの横顔をぼうっとながめる。
幽霊は眠ることができないと以前タツは教えてくれた。目を閉じることはできても、眠ることはできないらしい。
まあ眠られへんでも疲れたり眠くなったりせえへんしべつにええんやけど、とその時タツは言っていたけれど、眠ることもできず、自分が何者かも思い出せず、毎日時間が経つのをただ待つなんて考えただけで目眩がしてくる。
「それ」
顔を上げるといつの間にかタツは私のななめ前に立っていて、私の足元を指さしていた。足元には、部屋のどこかに置きっぱなしにしていた淡いラベンダー色のルームシューズが置かれていた。
「履いとき。足冷えるから。」
そう言ってふたたび私の横に座った。
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蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、お久しぶりです…！早速コメントくださりありがとうございます。かなり前のお話をまだ読み返していただけてうれしいです…(T . T)少しずつの更新にはなりますがお付き合いいただけると幸いです！ (2022年11月20日 18時) (
レス) id: a5f8e6e331 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - お久しぶりです。数日前に満月の夜は〜を読み返したばかりです(^^)また蒼夢見子さんの新作読めるの嬉しいです♪続きも楽しみにしてます。 (2022年11月20日 6時) (レス) id: 9548b7921c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2022年11月20日 0時
