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フキちゃんの飼い主は高齢の女性らしかった。
交差点まで赤い軽自動車でフキちゃんを迎えに来た女性ーーふくよかで感じの良い50代前半くらいのそのひとはフジワラさんと名乗ったーーは「母が本当に大事にしている猫だったから」と、何度も何度も私たちにお礼を言って、それからフキちゃんをペットキャリーに入れて帰っていった。
「すみません。寒い中付き合わせてしまって。丸山さんの言うとおり、フキちゃん抱えたままだと電話とかできなかったので助かりました。」
私と丸山さんは家に帰るためにまた、来た道を引き返す。
フキちゃんのぬくもりがわずかに残る腕につめたい風がしみた。
「あっ、いえ、全然です。無事飼い主さんのとこに帰れてほんまによかったです。」
微笑んだ丸山さんの頬にえくぼができていて、私は頭の中でまた「日なたのひと」という単語をなぞる。
「Aさん、フキちゃんの恩人ですね。」
「…そんなのじゃないです。たまたまだし、丸山さんが気づかなかったら多分あそこに猫がいるのも気づかなかったので。」
「いやでも、ポスターで見ただけの猫のこと、覚えてられるってすごいやないですか。」
すごいです、と丸山さんはどこか誇らしそうにうなずいた。
正直、さっきまであまり話したことのないひとと歩くことは億劫に思っていたけれど、道が別れるまでの間、私はすこしも居心地の悪さを感じたりしなかった。
それは、丸山さんがほとんどしゃべっていて、私があれこれ気に病みながら話す必要がなかったからなのかもしれないけれど。
ほんの10分くらいの間に、丸山さんはいろいろなことを話していた。その間に私は、丸山さんの出身が京都であること、欲しいものが入荷待ちでまだ家に炊飯器がないこと、それから高校生の時は陸上部だったことを知った。
「じゃあ、私ここまっすぐなので。」
話の切れ目でちょうどよく、丸山さんが曲がらなければいけない、建設会社の角にたどり着いた。
「あっはい。家まで気いつけてくださいね。」
はい、ありがとうございます、とうなずいて、では、と言おうとしたら、あ、と丸山さんがつぶやいた。なにか思い出したみたいに。
「今日ずっと思うてたんですけど、そのマフラー、綺麗な色ですね。」
丸山さんは私の首元を見て明るい顔でそう言って、「ほな、また明日」と頭を下げてから角を曲がっていった。
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蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、お久しぶりです…！早速コメントくださりありがとうございます。かなり前のお話をまだ読み返していただけてうれしいです…(T . T)少しずつの更新にはなりますがお付き合いいただけると幸いです！ (2022年11月20日 18時) (
レス) id: a5f8e6e331 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - お久しぶりです。数日前に満月の夜は〜を読み返したばかりです(^^)また蒼夢見子さんの新作読めるの嬉しいです♪続きも楽しみにしてます。 (2022年11月20日 6時) (レス) id: 9548b7921c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2022年11月20日 0時
